明るい部屋:映画についての覚書 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter



山田宏一『ハワード・ホークス映画読本』


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評価の目安: ★(興味深い); ★★(見たほうがいい); ★★★(とにかく必見); ★★★★(大傑作、あるいは古典)

2016-11-30

[]エリック・ロメール『クロイツェル・ソナタ』




エリック・ロメール『クロイツェル・ソナタ』(56) ★★


レフ・トルストイの原作を習作時代のロメールが映画化した短編。ロメールは監督・脚本のみならず、主演もつとめている。製作担当のゴダールが、ロメールの知人役で出演しているのも見逃せない。クレジットはされていないが、撮影にはリヴェットも手を貸したという。


ロメールが俳優として登場する映画はこれ以外にもあるが、この映画のかれは、怒りにまかせて食器を床にたたきつけたり、相手を殴りつけたりと、なかなかの熱演ぶりで、最後は妻をナイフで刺し殺しさえする。こんなに熱情的なロメールは見たことがない。

映画は、そのクライマックスの殺人シーンからはじまるのだが、これもまたロメール作品としては異例のことだ。ロメールはこの作品をサイレント映画として撮っていて、そこにナレーションと音楽だけを重ねるという特殊な作り方をしている。冒頭のシーンから、映画は主役であるロメール自身の声にによるナレーションとともに、かれが未来の妻となる女性とジャズ・クラブで出会う場面にフラッシュバックしてゆく。

互いに愛のないことがわかっている2人が結婚し、当然のごとく結婚生活が破綻してゆく様が描かれるのだが、ロメールのこの映画にはトルストイの原作とは異次元の陰鬱さが漂っていていささか面食らう。だれかが言っていたが、ここにはたしかに吸血鬼映画を思わせるところがある。この映画のロメールはまるでムルナウ映画のノスフェラトゥのようではないか。




ロメールは映画のなかでほとんど音楽を使わない監督なのだが、この映画では、最初から最後まで音楽が流れつづけるのもまた珍しい(もちろん、音楽はベートーヴェン)。

古典文学の映画化だが、いかにもヌーヴェル・ヴァーグの映画らしく、ここにも途中で、「カイエ・デュ・シネマ」の事務所が一瞬映し出されて、アンドレ・バザンや、シャブロル、トリュフォー、シャルル・ビッチなどが顔を見せる場面がある。これも見逃せない。


公式の場所では2回ほどしか上映されたことがなく、長らく幻の作品だったが、数年前にデジタル化されて DVD・Blu-ray でも見られるようになった。


2016-11-29

[]ジョゼフ・ロージー『The Gypsy and the Gentleman』




べつに忙しかったわけではないのだが、なんだか何もやる気が起きず、すっかりブログの方もご無沙汰している。そろそろ更新しようと思う。しかし、長いものはかけそうにないので、まずは短い記事から。

ジョゼフ・ロージー『The Gypsy and the Gentleman』(58) ★½


ジョゼフ・ロージーが赤狩りに追われて亡命先のイギリスで撮った時代物。

ロージーという監督はときどき、なぜこんなものを撮ったのだろうという映画を撮って我々を悩ませる。これもそんな1本だ。そんなに出来が悪い映画ではない。ただ、あまりロージーらしくないのだ。


19世紀、摂政時代のイギリスが舞台。ロージーが20世紀以前の時代に設定された物語を撮るのはたぶんこれが初めてであり、それ以後も、『恋』や、音楽劇『ドン・ジョヴァンニ』など、ほんの数えるほどしか撮っていない。その点では、重要な作品である。ロージーは、摂政時代の風俗を描くことに意欲的だったというが、プロデューサーとの対立から、完成前に作品から手を引くことになる(メルクーリを監視しに(?)いつもセットにやってくるジュールス・ダッシンも目障りだったらしい)。彼のインタビューの言葉には、もっといい映画になっていたはずなのにという無念さがにじみ出ている。


自堕落な生活を送る貴族ポールは、たまたま知り合ったジプシーの女(メリナ・メルクーリ)を下女として屋敷に住まわせる。ジプシー女は、ポールの財産欲しさに、彼を誘惑し、とうとう思惑通りに結婚して屋敷の女主人におさまる。しかし、実は、男は破産寸前で、何もかもが抵当に入っているのだった。そんなとき、男の妹に遺産が転がり込む。ジプシー女は妹をだまして、遺産を手に入れようとし、情夫と共謀して、妹を屋敷近くの塔に閉じ込めさえする。ポールは、ジプシー女には愛人がいて、自分の財産にしか興味がなく、あまっさえ妹の命まで危険にさらそうとしていることを知っても、自堕落な生活を変えることができず、ジプシー女とともに文字通り堕ちてゆく……。

階級も生活環境も違うストレンジャーが家のなかに入り込み、時には主従の関係を逆転させさえして、家庭を崩壊させてゆくというのは、ロージーが何度も繰り返し描いてきた物語であり、そういう意味では、これはいかにもロージー的な物語である。なのにここには、ロージーの失敗作にさえ強烈に感じられるロージー的な〈嫌らしさ〉のようなものが希薄で、全然ロージーらしくない。むしろ、クライテリオンから DVD-BOX が出ているゲインズボロー・ピクチャーズ製作の『The Wicked Lady』などの一連の時代物メロドラマとの親近性を感じさせる作品である。ラオール・ウォルシュがもしこれを映画化していたなら、きっとすばらしい映画になっていたに違いないとも思う。


馬車とともに川に落ちたポールが、必死で這い上がろうとするジプシー女の口をキスでふさぎながら水中へと引きずり込んでゆくラストが印象深い。


2016-11-13

[]新作DVD——『悪魔の虚像/ドッペルゲンガー』『ラスト・ラン 殺しの一匹狼』『追想のヨーロッパ映画 ~死ぬまでに観たい名画 100 DVD-BOX』ほか





フランク・キャプラ『オペラハット 80周年アニバーサリー・エディション』 [Blu-ray]


ウィリアム・ウェルマン『ロビン・フッドの復讐』


『ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム(デラックス10周年エディション)』 [Blu-ray]

セシル・B・デミル『絶海の嵐』 [DVD]


『ハリウッド・メロドラマ傑作選 この三人』 [DVD] 、『ハリウッド・メロドラマ傑作選 さすらいの涯』 [DVD]

『西部劇 ベストバリューDVDセット (期間限定スペシャルプライス)、『西部劇 ベストバリューBlu-rayセット (期間限定スペシャルプライス)』


『騎兵隊西部劇コレクション DVD-BOX』


「午後の喇叭」「西部の二国旗」「勇魂よ永遠に」「戦いの矢」「最後の砦」の5作品収録。


ラッセル・ラウズ『必殺の一弾』 [DVD]


"The Fastest Gun Alive" というタイトルに惹かれて見た。ヘンリー・キングの『拳銃王』に通じるようなガンファイターの孤独を描いた映画だったと記憶しているが、正直、よく覚えていない。


ブレイク・エドワーズ『追跡』 [DVD]


ベイジル・ディアデン『悪魔の虚像/ドッペルゲンガー』(1970) [DVD]


冒頭、ロジャー・ムーア(まだボンド役でブレイクする直前の)が、ハイウェイを走行中に、突然何者かに憑依されたかのように車を暴走させ始めると、奇妙なことに、黒い車にオーバーラップして、ブルーのスポーツカーが現れ、それが何を意味するのかわからぬまま、車は激突して大破する。病院に担ぎ込まれたムーアの心電図には、不思議なことに2つの心臓の鼓動が一瞬現れるのだった……。

始まり方はなかなかよい。その後が、いま見るとちょっと平板な展開になるのが残念だが、なかなか興味深い作品。


リチャード・フライシャー『ラスト・ラン 殺しの一匹狼』 [DVD]


フライシャーの数ある傑作の1つ。


トビー・フーパー『ファンハウス/惨劇の館≪最終盤≫』 [Blu-ray]


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