明るい部屋:映画についての覚書 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter



「橋を越えると亡霊たちが迎えにやってきた」(ムルナウ『吸血鬼ノスフェラトゥ』)

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評価の目安: ★(興味深い); ★★(見たほうがいい); ★★★(とにかく必見); ★★★★(大傑作、あるいは古典)

2016-09-23

[]新作DVD——『阿片台地 地獄部隊突撃せよ』『サミュエル・フラー・セレクション Blu-ray BOX』ほか






『サミュエル・フラー・セレクション Blu-ray BOX』


ショック集団』『裸のキッス』『チャイナ・ゲイト』の3作品を収録。DVD化・単品での発売の予定はないとのこと。

マーティン・スコセッシ『タクシードライバー 40周年アニバーサリー・エディション(初回生産限定)』 [Blu-ray]



ルイス・ブニュエル監督『アンダルシアの犬』 Blu-ray『【Amazon.co.jp限定】アンダルシアの犬』 Blu-ray (オリジナルトートバッグ付き)、『アンダルシアの犬』 HDマスター [DVD]


ロベール・ブレッソン『抵抗-死刑囚の手記より-』 [DVD] 、


アラン・レネ『去年マリエンバートで』 [DVD]


ペドロ・アルモドバル『神経衰弱ぎりぎりの女たち』 [DVD]

『大いなる沈黙へ グランド・シャルトルーズ修道院』 [DVD2枚組+CD1枚組]


ジャ・ジャンクー『山河ノスタルジア (プレスシート付)』 [DVD]


加藤泰『阿片台地 地獄部隊突撃せよ』[Blu-ray] 、『 阿片台地 地獄部隊突撃せよ』[DVD]





『ざ・鬼太鼓座』 [Blu-ray] 、『ざ・鬼太鼓座』[DVD]





『江戸川乱歩の陰獣』[Blu-ray] 、『男の顔は履歴書』[Blu-ray]


『【早期購入特典あり】セトウツミ 豪華版(「セトウツミ」放課後ブロマイド 「Amazon」Ver.付き)』 [Blu-ray]




『【早期購入特典あり】セトウツミ 豪華版(「セトウツミ」放課後ブロマイド 「Amazon」Ver.付き)』[DVD] [DVD]




知らなかったのだが、メディアディスクという怪しげな会社から【超高画質名作映画シリーズ】というのが出ているようで、なかなかのラインナップである。この値段で、宣伝文句通りに本当に超高画質でこのクラスの作品が見られるのなら、悪くはないのではないか。コメントを読むかぎり評判はいいようであるが、例によって、よくわからない素材をもとに作られているらしく、なかには外れもあるようだ。とくにサイレント映画の場合は、輸出先の各国で独自の編集をされたヴァージョンが出回っていたりするので、オリジナル版とは微妙に違っているものも多い。しかし、そういう細かいことは気にしない人には、いいのではないだろうか。どれも名作ばかりだし。

『キートンの西部成金(Go West)』 [DVD]デジタルリマスター版、『キートンの恋愛三代記(Three Ages)』 [DVD]デジタルリマスター版 、『海底王キートン(The Navigator)』 [DVD]デジタルリマスター版、『キートンのセブン・チャンス(Seven Chances)』 デジタルリマスター版 、『キートンの大学生(College)』 [DVD]、『キートンのカメラマン(The Cameraman)』 [DVD]デジタルリマスター版、『キートンのエキストラ(Free and Easy) 』[DVD]デジタルリマスター版



キートンの主要作品がかなりそろっている。わざわざ「劇場版」と書いている意味がよくわからないが(それ以外に何があるというのか)、まあ気にしないことにしよう。





アルフレッド・ヒッチコック『巌窟の野獣(Jamaica Inn)』 [DVD]デジタルリマスター版、『第三逃亡者(Young and Innocent)』[DVD]デジタルリマスター版、『恐喝(Blackmail)』 [DVD]デジタルリマスター版、『舞台恐怖症(Stage Fright)』 [DVD]デジタルリマスター版、『断崖(Suspicion)』 [DVD]デジタルリマスター版、『三十九夜(The 39 Steps)』 [DVD]、『救命艇(Lifeboat)』 [DVD]デジタルリマスター版、
『白い恐怖(Spellbound)』 [DVD]デジタルリマスター版、『汚名(Notorious)』 [DVD]デジタルリマスター版



オーソン・ウェルズ『市民ケーン(Citizen Kane)』 [DVD]デジタルリマスター版、『市民ケーン(Citizen Kane)』 [Blu-ray] デジタルリマスター版


「3D」と書いてあったりするのが謎だが、これもまあ気にしないことにしよう


『キング・コング(King Kong)』 [DVD]デジタルリマスター版


『戦艦ポチョムキン (Battleship Potemkin)』 [DVD]デジタルリマスター版 、『十月 (October)』 [DVD]デジタルリマスター版



『操行ゼロ (Zero For Conduct)』 [DVD]デジタルリマスター版
『裁かるるジャンヌ (The Passion of Joan of Arc)』 [DVD]デジタルリマスター版
『ぼくの伯父さんの休暇 (Mr. Hulot's Holiday)』 [DVD]デジタルリマスター版

2016-09-21

[]ブライアン・デ・パルマレイジング・ケイン』再見メモ




ブライアン・デ・パルマ『レイジング・ケイン』★★


この映画を最初に見たのは、たしか当時たまたま2ヶ月ほど住んでいたトゥールの映画館のフランス語吹き替え版だった*1。わけがわからない映画に見えたのは、自分の語学力のなさのせいだと思っていたのだが、今度数十年ぶりに見直してみて、元々こういう映画だったのだと気づいた。

同じ出来事が別の視点から語り直されるのだけれど、語りの視点となる1人は多重人格者で、ときには妄想と現実の区別も判別しがたく、さらには、唐突にオープニング以前の時点まで時間が遡る場面があったりして、一回見ただけでは物語の流れをちゃんと理解するのも難しいだろう。ちゃんとつじつまが合っているのかどうかも怪しかったりするのだが(いちおう矛盾なく作られているようなのだが)、ここでのデ・パルマは論理的な首尾一貫性などさして気にしていないように思える。ほとんど一瞬たりとも信じがたい物語は、演出を見せつけるためのただの口実にすぎないといっていい。

マッド・サイエンティストの父親がおこなう実験によって多重人格にされてしまった息子ケイン。オリジナルと劣化したコピー。これはまさにヒッチコック=父をコピーし、ヒッチコック的モチーフを分裂させてゆくデ・パルマそのものではないか。そもそも多重人格自体が『サイコ』のテーマである。ヒッチコックへの目配せはこれ以前の作品でも何度も見られてきた。しかし、この作品では、息子を支配する母親ではなく、父親を登場させることで、ヒッチコックとの親子関係にあからさまに自己言及しているという意味で、デ・パルマはある種の宣言のようなことをやっているようにも見える。『アンタッチャブル』や『虚栄のかがり火』など、慣れない映画を撮って失敗してしまったが、やっぱり自分の映画はこれなのだと(しかし、その後の展開を見ると、未だにやはり何がしたいのかよくわからないのだが)。

この作品におけるヒッチコックへの言及は、もはやオマージュと言うよりはパロディというしかないものにまで、あえて極端に推し進められている。ヒッチコックだけではない。クライマックスの乳母車の赤ん坊も、エイゼンシュタインへの言及と言うよりは、『アンタッチャブル』における『戦艦ポチョムキン』のオデッサの階段のシーンへの自己言及にすぎず、『アンタッチャブル』で引用されたときのような社会悪の犠牲となる無垢の存在という一応の解釈さえ許さない、ほとんどパロディに近いものになっている(階段ではなくエレベータで移動する乳母車)。

バカなことをやっているなと思いつつも否定しがたい魅力があるのもたしか。それにしても、デ・パルマはやはりピストルよりもナイフやカミソリを使っているときのほうがいいのではないかと思う。


*1スペインほどではないがフランスも吹き替え天国なので、地方都市では吹き替え版しか見る機会がないことも少なくない。イーストウッドの『許されざる者』を初めて見たのもフランス語吹き替え版だった。

2016-09-20

[]リチャード・フライシャー『静かについて来い』




リチャード・フライシャー『静かについて来い』★★


フライシャー初期の犯罪映画。フィルム・ノワールとして語られることもある作品だが、実際は、刑事映画といったほうが内容に近い。フライシャーとしてはマイナーな部類に入る作品で、正味一時間にも満たない小品である。出ている俳優も地味だし、傑作とは言い難いが、興味深い点は少なくない。

ひとつは、この作品の原案がアンソニー・マンによるものだということだ。アンソニー・マンの研究書のなかには、この映画に一章をさいて、マンの原案と完成した映画との相違を詳細に分析したものもある。一部の場面はマンによって監督されたと言う研究者もいるぐらいだが、実際にそういう証言があるわけではなく、フライシャーの自伝でもこの作品のことはまったくふれられていない。ガス工場の落ちれば即死という高い階段の上で主人公の刑事と犯人が取っ組み合うクライマックスのシーンなど、斜面好きのマンが撮ったのではないかとつい考えたくなるし、そう主張する研究者もいるようだ。しかしこのときマンは『恐怖時代』の撮影で忙しく、RKOの資料にもこのシーンの監督はフライシャーが行ったとの記録がある。

もう一つ興味深いのは、この映画に出てくるダミー人形だ。土砂降りの雨の日だけ殺人を繰り返す〈ザ・ジャッジ〉と名乗るシリアル・キラーは、犯行を行うたびにいくつもの手がかりを残してきた。背格好や着ている服など、多くのことがわかっているが、ただその顔だけがわからない(フランスでの公開タイトルは「顔のない殺人者」だった)。主人公の刑事は今までの手がかりをもとにして犯人そっくりのダミー人形を作る。犯人と同じ背格好、同じ服、同じ帽子。ただ、その顔だけはのっぺらぼうの人形である。その人形や、それを写真に撮ったものを、聞き込み捜査などで使おうというわけだ。しかし、その後も犯行は繰り返され、刑事はいらだちを募らせてゆく。あるとき、刑事は、誰もいない警察の薄暗い部屋のなかで、窓際で背中を向けて座っているダミー人形に向かって、そんないらだちをぶちまける。そこに同僚の刑事が現れて2人は部屋を出て行き、部屋のなかにはダミー人形だけが残される。すると、暗闇のなかでこちらに背を向けて座っていたダミー人形が突然立ち上がり動き出す。それは人形ではなく殺人鬼だったのだ。驚くべきシーンである。ちなみに、このシーンはマンの原案にはなかったという。


ほかにも、殺人鬼の顔が初めて観客に見えると同時に、犯人が警察の罠に気づく瞬間とか、銃撃で穴が空いた水道管から噴き出した水を雨と勘違いして、犯人が正気を失って暴れ出すところとか、印象に残る場面はいろいろある。地味な作品ではあるが、見逃すのは惜しいなかなかの佳作だ。


  
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