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ブロンズブログ

2016-07-06

絵本『どもるどだっく』高山なおみさんインタビュー<後編>

| 10:52


先日発売になった絵本『どもるどだっく』(高山なおみ・文 中野真典・絵)。

店頭でご覧になった方もいらっしゃると思います。

高山なおみさんのインタビュー後編です。

絵本にはさみこまれているブックレットとあわせて読んでいただければと思います。


▼前編はコチラ

高山なおみさんインタビュー:前編「子どもの孤独」




高山なおみさんインタビュー:後編「ことば」について


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ーー本の帯にある「みんなと おなじようにできなくたって だいじょうぶだよ」は、

高山さんご自身が、子どものときに言われたかった言葉ですか

高山なおみさん(以下:高山) そうですね。言われてもわからなかったかもしれないけど。

でも母は、どもりの私に対してそういう姿勢だった。

私は3歳になっても、ちゃんとしゃべれなかったみたい。

「あんあん ばあばあ」みたいな、あかちゃん語だったんじゃないかな。

双子の兄のみっちゃんに比べて、言葉が遅かったので、ちょっとは心配したようだけど、

幼稚園の先生だった母はのんきな人だから、自分の仕事が忙しくて、それどころじゃなかったみたいです。


ーー言いたいことがいっぱいあるのに、言葉がするすると出てこないことに、

4歳のなみちゃんはもどかしい気持ちはありましたか

高山 どもっていることに自覚がないのね。

だから「おかあさんは、なんで私に、ゆっくりしゃべりなっていうのかな」とか、思っていた。

私は、言葉そのものを意識してしまうからしゃべれない。

それで、どもりなんだと思うの。言いたいことを伝えるために、例えば、「あ」を言って、次に「い」を言って、

その次は「か」って言わないとならないんだけれど、か行は出にくい音だからどうしよう……と考えちゃう。

心と言葉はまったく同じではないけど、みんなそのことを気にしないで当たり前のようにしゃべれるじゃないですか。

どもりの人にはそれができないんだと思うんです。自分の心の中にあるものにぴったりくる言葉を、

ひとつひとつくっつけて、これで合ってるかなって思いながらしゃべってるから。

あ、これは私の場合なんですけどね。みんなどうなんだろう……私、どもりの人から話を聞いてみたいな。


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ーーいまも言葉につまることはありますか

高山 いまはほとんどないけれども。

たくさんの知らない人たちの前に出たときとか、電話がかけられないとか、道を聞けないとか、

お店で注文ができないとか。わりとつい最近までそうでした。

たぶん、こわかったんだと思う。自分のことを知らない人に会うと、

四面楚歌になっちゃう。みんな、私のしゃべり方をへんだと思っているんじゃないか、とか。


ーーどもったときのまわりの人たちの反応が、さらにどもらせる?

高山 そうかもしれないですね。そうすると、萎縮して身体がかたくなっちゃう。

小学校では、先生にさされて「本読み」するのがいちばん苦手だった。

私が読むと、くすくす笑われたり、みんなそわそわしたりする。

東京・吉祥寺のレストラン・クウクウでシェフをしていたとき(1990年〜2003年)、

パーティなんかで料理の説明をするために、大勢のお客さんの前に出ることがたびたびあったの。

私、どもらないようにしようとすると、言葉がつまって声が出てこなくなるんです。

思っていることをちっとも伝えられない。

あるとき、お客さんの中に、大好きな絵本作家の木葉井悦子さんがいらしたときがあって、

木葉井さんが、私が声ふるわせて、つっかえつっかえ話すのを聞いていたんですね。

あとから、マスターを通じて知ったんだけど、

「格好よかったです、高山さん。ますます好きになりました」って、ほめられたの。

それを聞いて、「あ、このままでいいんだ」(笑)って思った。

だから、どもりであることで卑屈になる必要はないし、どもりはマイナスじゃないです。

そういうこと、この絵本をつくりながら思い出してました。


ーーそれはどういうことでしょう?

高山 身体の中に、言いたいことが人一倍溢れているんです。私はそれがどもりだと思う。

私はいつも、毎日の小さな変化をちゃんと見て、聞いて、生きていきたい。

そういうことを感じながら、できるだけそのまま正確に人に伝えようとすると、

隙間があいたり、同じ言葉を何度も重ねたり、変なリズムでしゃべったり、

急に声が大きくなったり、沈黙したりする。だから私、いまだにどもりなんです。

昨日と今日が違わないと思ったほうが、会社に行きやすいのは分かるし、

私もそんなふうにして、暮らしていた頃もありますけども。

本の帯に「ひりひりした歓び」とあるけども、

子どもの頃はみんな、一瞬一瞬の全てが新しかったはずですよね。


ーー言葉と一体になるというのは?

高山 わあ、むずかしいですね。身体を開いて、うそをつかないということかなあ。

あと、子どもの頃、母がひな祭りの歌を歌っているときに、

おかあさんの背中に耳をつけて聞いていると、声が直に身体に入ってくる。

おかあさんとひとつになる感じ。たとえば、そういう感触のことかしら。

関係ないけど、好きな人ができると、そういうことってしませんか? 結婚したてのころとか(笑)。

「食べる」ことも、そんなことのような気がする。身体の中に入れるから。

だから、うんこも味見したくなる(笑)。

小学校に入ってからだけど、1回だけ試したことがあるの。

あるときクラスで男子たちが、「おめえ、うんこって食べたことあるのかよ」

「ねえのかよお」「なんで食べねえだよ」って話してるのが遠くから聞こえてきて、

食べてもいいんだあって思って、一人でこっそりやってみた。

マッチ棒とかでチョンチョンとやって、舐めてみたんだと思う。そしたらとんでもない味だった(笑)。

苦い、かぁぁぁっみたいな(笑)。大丈夫ですかね、この絵本。

お母さんが、「うんこなんか味見したらだめだから、

読んじゃだめだよ、こんな本」ってならないかしら。それだけが心配(笑)。


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ーー子どもたちに、大人たちに向けて一言お願いします

高山 子どもたちがこの絵本を読んだときに、何を感じるんだろう。

パンツの女の子が出てくるから、ちょっとエッチな感じがして、こっそり見てくれたり、

声が爆発してるこの絵を見て、「ぼくのほうが上手に描けるよ」とか思ってくれたらうれしいな。

みんなと同じようにできない子には、「そのままでぜーんぜん大丈夫だよ」って言いたいし、

大人には、「どうだった? 気持ち悪かった? どんな感じがした?」って聞いてみたい。

その人の子どもの頃の話を聞いてみたいですね。

私はこうだったけど、あなたはどんなふうでした?って。とりつくろうことなしにね。


おわり


(聞き手/編集部 佐川祥子)



昨日7/5(火)から、絵本『どもるどだっく』の原画展がはじまっています。

高山さん、中野さんのトークイベントなども開催予定ですので、

この機会をぜひお見逃しなく。


★絵本『どもるどだっく』イベント情報はコチラ → CLICK!!

2016-06-09

絵本『どもるどだっく』高山なおみさんインタビュー<前編>

| 13:48

6/17(金)発売予定の絵本『どもるどだっく』(高山なおみ・文 中野真典・絵)。

本日、見本ができあがってきました!

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絵本には、なぜこの作品ができたのかについて、

高山さんに伺ったお話がブックレットとしてはさみこまれています。


このスタッフブログでも、前後編にわたって、インタビューを連載します。

ぜひ、絵本とあわせて読んでいただければと思います。


ーーー


かぜがふいて このはが ゆれると

おおきい わたしが ゆれる。

ちいさい わたしも ゆれる。


ちいさいころ、わたしは 

どもるどだっく とよばれていました。


わたし えも じも

おねえちゃん みたいに 

じょうずに かけないよ 

うまく しゃべれない


4歳のなみちゃんは、なんでもなめて、なんでもさわって 

からだじゅうでたしかめる野性あふれる女の子。

なみちゃんが出会っていく世界がひろがりますーー。




高山なおみさんインタビュー:前編「子どもの孤独」

   

ーーこの絵本は、高山さんの子ども時代の実体験ですか

高山なおみさん(以下:高山) 4歳のころの私の話です。

どもりじゃなくても、他の子と同じようにできないということは、誰にでもおこりますよね。

みんなと同じようにしたくない気持ちがあるのに、がまんして合わせたり、嘘をつかなきゃならないとか。


ーー子どものときはどんなふうに遊んでいましたか

高山 私は4人きょうだいだったのですが、一番上のおにいちゃんとは8歳離れていたから、当時はもう中学生で大人みたい。

2歳上のおねえちゃんと、ふたごの兄のみっちゃんと私の3人がチームだった。おねえちゃんがリーダーで、私がだめだめで。

みっちゃんは、人に呼ばれると、にこにこしてすぐに走ってくるような子で可愛かったんだけど、

私は、言うこときかなくて、手がつけられなかったって。心当たりあります(笑)。

おねえちゃんは、つりスカートでなくても大丈夫で、鼻くそもついてないし、いつもきりっとピンで髪をとめてて、

「私は○○だと思います」ってちゃんと最後までしゃべれたから、憧れでもあり、私にははっきりと劣等感がありました。

このころは、母や姉に怒られることが多かったですね。

「鼻くそついてるよ」「食べちゃだめだよ」「猫とキスしちゃだめだよ」とか。

自分がいいと思っていることに対して、よくないって言われることへの、

いじけた気持ちやうしろめたさもあった。絵本の中で、猫の口に舌を入れるシーンがありますが、

こんなとこ見られたら、おねえちゃんに怒られますよ。だから、縁の下の近くで隠れてやってるんだもん(笑)。

こういうことしてるから、お腹に虫がいるし(笑)。でも、そんなことぜんぜん平気だった。

それよりも、猫の口の中は、なんていい匂いなんだろうって思ってた。


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ーー「あめあめあめあめ」のシーンで、泣いているのは、どんな感情だったのでしょう

高山 雨が降ると、まわりの自然と、近くなりますね。葉っぱが匂いたって、色が深くなる。

地面も葉っぱも、ぜんぶ色が深くなる。この絵のシーンは、やっぱり、ひとりぼっちの気持ちなんじゃないかな。

傘をさすと、傘の下が、自分だけの空間になって、音もこもる。

世界が「私」と「雨」というふうになれるんですね。いまでも、この感じです。

でも実は、それは中野真典さんの絵を見て気がついたんです。左目だけ泣いている絵だったから。


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ーーこの絵本は、自然と一体となる子どもの生命力を感じさせると同時に、どこかさびしさも漂っていませんか。

高山 幸福感と孤独感は、背中合わせみたい。私は小さいころ、夕方になるとすごく泣く子だったらしい。

「あんた、畳の上で、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになって、手がつけられなかった」って、姉が。 

いまでもそうなんですけど、夕方になると心細くなる。

夕日が沈む直前って、強烈に光るときがありますよね。

それを見ると、死ぬ前の感じを思うんですね。

小さいながらに、いつか、なにもかもなくなるって感じていたんじゃないかな。

夕方から夜になり、真っ暗になっていくとき、「あ、今日が終わっちゃうんだ」っていう感じ。

なんの脈絡もなく、「おかあさん、死んじゃうのかな」とか。

変わらないものなんてない、ということが怖くてせつない。

それが孤独なんじゃないかと思うんですね。みんなひとりぼっちで。

一方で、夕方には、死ぬことへの恍惚感もある。

子どもにとって、死ぬことって、自分が元いたところに還っていくことのように思うんですね。

お母さんのお腹の中とか、もっと太古の昔のところへ。


ーー匂いの記憶にはどんなものがありましたか。

高山 ひいばあちゃんの部屋で、こっそりひいばあちゃんが梅酒をくれたことがあったの。

甘くて、すっごく美味しくて。お酒ですよ(笑)。

そのときのひいばあちゃんの部屋って、年よりの匂い、湿った匂い、

なんか死の匂いがするように感じた。あ、死ぬんだなって。

私ももう、若くないけれど、年とって、朽ちて滅びていくのと、

あかちゃんが生まれて、新しく更新していくことが、一緒くたにある。

そういう自然の摂理が、せつないのかな。

この世は、そういう仕組みになっている。必ず終わりがくる。人は死んじゃう。

新しいものがくるっていうことは、死があるってことだとか。

そういう気配、大人も子どもも、みんなうすうす感じている。

だから、夕方、音楽が聞こえてきたりすると、「もう、帰んなきゃ」となって、条件反射のようにせつなくなるのね。    


(聞き手/編集部 佐川祥子)


後編に続きます。



★絵本『どもるどだっく』イベント情報はコチラ → CLICK!!

2016-05-30

絵本『どもるどだっく』イベント情報!

| 19:22

子どものころ吃音があり「どもるどだっく」と呼ばれていた、

高山なおみさんの根っこにいる、野性あふれる4歳のなみちゃんの絵本が、

中野真典さんの濃厚な絵と共にできあがります(6/17発売予定)。

その刊行記念として、原画展とイベントを開催いたします。

ぜひお越しください。

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▼「どもるどだっく」絵本原画展

会期:2016年7月5日(火)〜10日(日)

場所:Space & Cafe ポレポレ坐


◆出版記念イベント

日時:7月9日(土)19:00〜  

内容:高山なおみ+中野真典トーク、朗読、ライブペイント、

   絵本作家・山福朱実+クラシックギタリスト・末森樹による歌など

料金:前売2,300円/当日2,800円 要予約


◆夕涼みクロージングパーティ

日時:7月10日(日)18:30〜21:00頃 

内容:スナック休ミ・どもるどだっくスペシャル

   絵本作家加藤休ミさんがチイママとなり、みなさんをお迎えする、

   ゆったり夕涼みのひととき。

会費:2,000円 要予約


◆「えほんラジオ」公開放送 at どもるどだっく展

日時:7月5日(火)14:00〜

ゲスト:高山なおみ、中野真典

パーソナリティ:加藤休ミ+ダイ小林(ウレシカ店主)

会費、予約不要


※お問合せ・詳細はこちら → ポレポレタイムス社

東京都中野区東中野4-4-1 ポレポレ坐ビル1F

TEL 03-3227-1405



▼高山なおみ×土井章史 トークイベント

高山なおみさんの質問「土井さん、絵本についていっぱい知りたいんです」


日時:7月8日(金)19:30〜21:00 (開場19:00)

内容:高山なおみさんがシェフをつとめたレストラン・クウクウ、

   その上の階にあった絵本の店トムズボックス。

   同時代を同じ場所で過ごしたおふたり、はじめての絵本トーク。

場所:百年

料金:1,000円 要予約

定員:50名 

※定員に達したため予約受付は終了しました。



※お問合せ・詳細はこちら → 百年

東京都武蔵野市吉祥寺本町2-2-10-2F

TEL 0422-27-6885