最近のいただきもの

しばらく更新してなかったのですが、去年の10月頃からいくつか本を頂いておりました。
まず與那覇潤先生の『日本人はなぜ存在するか』。Twitterなどでもいろいろ感想を見ましたが、皆さん書かれているように「再帰性」がポイントになるということかと思います。個人的にはそれをほとんど「制度(の形成)」と読み替えながら理解して、非常になるほどなあと思うところがありました。人々の再帰的な選択からなるある種の「制度」がいたるところに創りだされていること を非常にうまく描かれていて(もちろん「日本人」それ自体「制度」なわけですが)、その点が特に興味深く感じたところです。しかしいつも書いてる気がしますが、與那覇先生ほんとにすごい量書いてますね…。一時期#このまま校正し続けて死ぬってハッシュタグ使ってらっしゃいましたけど、それもさもありなんというか(違)。

日本人はなぜ存在するか 知のトレッキング叢書

日本人はなぜ存在するか 知のトレッキング叢書

早稲田大学の久米郁男先生からは、『原因を推論する−政治学方法論のすゝめ』を頂いておりました。政治学方法論についての教科書ですが、これすごくいい教科書です。豊富な例とともに政治学(というか社会科学)の方法論、リサーチデザインについてきっちりと説明されていますし、何より例が面白くて非常にわかりやすい!本書でも書かれていましたが、今までこの手の方法論の書籍の定番といえば、高根正昭先生の『創造の方法学』だったと思いますが、本書が出たことによって一般向けの書籍として一段階進んだと言えるのではないでしょうか。たぶん僕自身も来年の授業で使うだろうな、という感じです。
原因を推論する -- 政治分析方法論のすゝめ

原因を推論する -- 政治分析方法論のすゝめ

創造の方法学 (講談社現代新書)

創造の方法学 (講談社現代新書)

建築と政治に関する研究会でご一緒している先生方からいくつかご著書を頂いておりました。中村武生先生には『京都の江戸時代をあるく』を頂きました。中村先生の博識には毎回本当に驚いてばかりなのですが、本書を読むとその博識の一端を伺えて非常に面白いです。本当は京都の町についてもっとよく知っていれば更に楽しめるのに、と思うところですが。特に京都にあった城壁*1や京都以外でも都市をめぐる城壁の話が個人的には興味深いです。西洋中世の都市は城壁に囲まれていた、と言われるわけですが、日本でもそういう都市があったということは恥ずかしながら知りませんでした。そういう城壁の存在は現代に何かの影響を与えているとしたら面白いのですが。
京都の江戸時代をあるく―秀吉の城から龍馬の寺田屋伝説まで

京都の江戸時代をあるく―秀吉の城から龍馬の寺田屋伝説まで

御厨貴先生から『馬場恒吾の面目』、井上章一先生から『日本人とキリスト教』を頂きました。ともに以前出版されて広く読まれてきた本の文庫化です。文庫化ってよく読まれている上にこれからも読まれることが期待されるわけですごい話です。一度くらいは文庫化されるような本を書いてみたいなあと思ったり(まあ僕には無理でしょうが)。さらに御厨貴先生、牧原出先生、佐藤信先生から『政権交代を超えて』を頂いております。亀井静香小沢一郎細田博之谷垣禎一塩崎恭久岡田克也辻元清美松井孝治湯浅誠、といったなかなか渋い面々へのインタビューがメインということになりますが、冒頭の座談会と最後の論文も興味深いものではないかと。
政権交代を超えて――政治改革の20年

政権交代を超えて――政治改革の20年

年末年始にかけては、近藤正基先生、稗田健志先生、相馬直子先生、北山俊哉先生、城下賢一先生から『比較福祉国家』を頂きました。以前稗田さんの章(福祉国家研究における回帰分析)だけ読ませて頂いて非常に面白いなあと思っていたのですが、全体についても理論・計量の方法・各国比較と非常に盛りだくさんの良い本だと思います。特に学部で福祉国家に興味がある方や、大学院生が自分で勉強するにはちょうどよい本ではないかと。教える側からすると、なかなかこれを全部フォローしてるというのは難しいでしょうから、興味がある学生のみなさんと一緒に勉強するっていう感じになるんですかね。
比較福祉国家: 理論・計量・各国事例

比較福祉国家: 理論・計量・各国事例

最後になりましたが、中澤俊輔先生から『国際環境の変容と政軍関係』を頂きました。中澤先生は戦前の政党内閣末期から戦時中にかけての内務省(警察)と陸軍の関係について分析されているものです。治安維持に不可欠な実行力をもつけれども、軍隊ほどに武装していない警察から見ると、軍隊というのは本当に度し難い存在なのだと思いますが、軍隊が政権に対して影響力を強める中で、警察としては軍隊との付き合い方を考えなくてはいけないわけです。陸軍の特に皇道派に属する将校と内務省(とりわけいわゆる新官僚)との関係の分析などは、以前にも紹介した黒澤良『内務省の政治史』と通じるところもあって、合わせて読むとさらにおもしろいものとして読めるのではないかと思います。
内務省の政治史 〔集権国家の変容〕

内務省の政治史 〔集権国家の変容〕

*1:御土居堀」というそうです。詳細は中村先生の『御土居堀ものがたり』を。

御土居堀ものがたり

御土居堀ものがたり