日本のシャチョさんと愚民政策(追記アリ


はてなブックマーク - 不当解雇に泣き寝入りの事例なんて世の中にごまんとあるというのに - 捨身成仁日記 炎と激情の豆知識ブログ!
ここでブクマコメしたやりとりを補足いたしますにゃー。
まずは、ここであったやりとりを時系列にそって配置

「正社員は解雇しにくい」とか言われているこの現代日本においてさえ、不当解雇の事例やそれについて泣き寝入りする事例なんざあ、枚挙に暇がないわけですが。このような現代において、「雇用の流動性を高める」と称して解雇のハードルをこれ以上下げれば、今の不当解雇が不当解雇にならなくなる可能性は高いわけで、コンプライアンスって何?ってな経営者が世の8割を占める(俺の脳内調べ)と感じられるこの日本において、労働者はよりヤバイ状態に追い込まれるのは明らかだと思うんだけどね。
http://d.hatena.ne.jp/buyobuyo/20090122/p1

僕「整理解雇の四要件をいえる経営者は日本に何パーセントいるだろうか? 調査したら面白いだろうねえ。」
id:kyo_ju「要件を知っているから、自主退社に持ってくために手練手管を使う訳でしょう。中小企業でも社労士の入れ知恵とか同業者の情報交換とかある訳で」
id:buyobuyo「弁護士に経営者がみんな俺くらい労働関連法に詳しければどんなに楽だろうか、って言われたことがあるのでそんなことはないと思うよ」
id:kyo_ju「「解雇は色々面倒」程度には認識しているかと」


さて、日本のシャチョさんたちは、本当に「解雇は色々面倒」程度には認識しているのでしょうかにゃ?
これは、さるやり手のベテラン社労士に聞いたことにゃんが
「新聞だのテレビのニュースだので、リストラ断行だの整理解雇何百人・何千人だの人員整理何十パーセントだのというのが目に入りますと、法律を知らないヒトは簡単に解雇できると思っちゃうんですね。もちろん、大会社における解雇はそれなりに慎重に行われますが、新聞記事やニュースではそんなことに触れない。首なんて切り放題だと思っている中小零細の経営者はいくらでもいますね」


実際に、労働審判の申立件数は増えているし、その中でもっとも多いのは不当解雇などの地位確認に絡むもののようですにゃ。まあ、今回は不当解雇のことを突っ込んでみるというお話ではにゃーのだけれど。


社労士の入れ知恵とかkyo_juはいっているけど、事業所への社労士の関与率はだいたい20〜30%くらいですにゃ。後で述べるけど、この国では労働法違反や社会保険未加入はあまり取り締まりされにゃーので、シャチョさん達は労働法も社会保険も基本的なことすら知らにゃー。

例えば労災保険の加入状況

経営者の悪質さをよく表す指標のひとつが、労災保険の未加入であると考えますにゃ。労災保険労働基準法に該当する労働者を1人でも雇ったら原則的に加入義務のある保険ですにゃ。個人事業主だろうと零細企業だろうと義務は免れにゃー。
経営者というのは労働者の身柄をあずかって業務命令を出しているわけで、業務上の災害においては原則的に賠償義務がありますよにゃ。零細企業や個人経営で、労災によって労働者を死なせたりしたら、一発で倒産となる危険すらありますにゃ。
労災保険に入ってにゃーヤバさは、解雇手続きを知らにゃーヤバさどころではにゃーだろう。他人様を雇う以上、道義的にもアタリマエのはず。
法的にも加入が義務づけられているのだから、労災保険未加入など常識的には考えられにゃー。


労災保険については、404なんかが参考になりますにゃ。給付は厚いよ。
キャノンあたりが多用していた擬装請負の悪質さってのは、請負では個人事業主ということになるので、労災が認められにゃーところにもありますにゃ。実態は労働者なのに、労災保険を払うつもりもにゃーわけだ。あいつら豚だね。


http://www.city.takayama.lg.jp/shoukou/documents/18-33_000.pdf PDF書類
さて、リンクしたのは、高山市(人口:95,069人、世帯数:34,288世帯)における社会保険加入状況の資料ですにゃ。PDFだから注意。ここから引用してみると。


規模別では、回答のあった「101人以上」の従業員を雇用している事業所において、全種類の保険への加入率が96.9%(32社中31社)である一方、「1〜5人」の少人数の事業所においては、各種保険の加入率が7割程度である。


おいおい、規模が101人以上の企業で、労災保険未加入のところがあんのかよ!
しかも、資料を見ると、建設業で5%以上、製造業で10%弱の事業所が労災未加入とは!
で、
高山市が特殊かというと、そんなことはなさそうですにゃ。ちゃんとしたデータがちょっと見つからなくて申し訳にゃーのだが、労災保険未加入事業所は全国でだいたい50〜60万事業所くらいあるそうですにゃ。全国での総事業所数がざっと650万事業所くらいだとして、10%弱ほど労災保険未加入の、悪質な法令違反事業所があることになりますにゃー。


実は、労災保険の加入は法的に義務づけられているけれど、罰則はにゃーのだ。実際に労災が起きないかぎり、直接のペナルティは経営者に科せられることはにゃーようだ。でね、労基署の職員が回って、労災保険に加入しろといっても、「罰則がないなら払わん」とか抜かすシャチョさんはごろごろいるらしいにゃ。
労災保険未加入は零細企業に多く、そして零細企業ほど労災の発生率は高い。道義的な観点からも、経済的合理性からも、労災保険未加入ってのはお話にならにゃーはずなのに・・・・
こういうシャチョさんたちが、解雇の法的な要件を知っているとはとても思えにゃーですね。

義務教育でやるべきこと

しかしまあ、シャチョさんたちだけが労働法をわかってにゃーかというと、ぜんぜんそんなことはにゃーわけだ。首を切られる方はさらに労働法を知らなかったりするものですにゃ。擬装請負を強いられた労働者なんかも労働基準法をわかってなかったよにゃ。
道徳だの愛国心だのと騒ぐ前に、民法(特に信義則の使い方とか消費者保護関連)と労働法の基礎を義務教育でやるべきだにゃ。民法・労働法の基礎を知らないヒトタチが食い物にされているよにゃ。
「約束は守りましょう」
とかいう道徳よりも
「信義則に反した契約は無効」「労働基準法に反する労働契約は無効」「判断は実態で」
とかいう知識のほうが生きるうえでよっぽど役に立ちますにゃ。
というか
民法や労働法の知識を与えずに道徳教育だけするなんざ、食い物にするために愚民を製造しているとしか思えにゃー。

追記 14:55ごろ

プロからトラバで補足をいただきましたにゃー。

ここで補足されているとおり、擬装請負とかいう名目であっても、労基署とか労働審判、あるいは裁判においては【実態で判断】ということになっているんで、とにかく泣き寝入りはしにゃーこと。


あと、これもトラバ先でリンクされているけれども

これはタイムリーに香ばしいこと。
「政治家も、労働法なんて知らんという中小零細企業主なみですか。」と李さんもおっしゃっているけれど、「この政治家センセイにして、このシャチョさんあり」という感じにゃんねえ・・・


リンク切れ対策として、中身をコピペしておきますにゃ。


労働保険:5閣僚事務所が未加入 強制知らず秘書分など


 河村建夫官房長官麻生内閣の閣僚5人の資金管理団体が、雇用する私設秘書や短期アルバイトについて強制加入の労働保険に未加入だったことが毎日新聞の調べで分かった。5人の事務所は取材に法令の理解不足から未加入だったとし、うち3事務所は先月末以降に06年度にさかのぼって加入。労働問題が政治課題となる中、閣僚から関係法令違反が発覚した。【稲垣衆史、秋山信一、中村かさね】


 全閣僚の資金管理団体について所管の労働局から開示された労働保険料の申告書類(05〜08年度提出分)を基に、今月21〜24日に各事務所に確認した。河村官房長官塩谷立文部科学相金子一義国土交通相浜田靖一防衛相▽甘利明行政改革担当相−−の5人の団体が保険未加入か最近まで加入していなかった。未加入は長年続いたとみられるが、労働保険料徴収法でさかのぼって徴収できるのは2カ年度分。


 金子、浜田両氏の団体は私設秘書分などが未加入で、先月25、26日に加入した。他の3氏の団体は短期アルバイト分が未加入で、甘利氏の団体は今月16日に加入、河村、塩谷両氏の団体も近く加入するとしている。


 金子氏事務所は「強制ということを失念していた」、浜田氏事務所は「認識が甘かった」、他の3氏事務所は「アルバイトは加入の必要がないと誤解していた」などと釈明した。


◇金子氏団体では推計52万円未納
 政治資金収支報告書によると、5団体の05〜07年の人件費は▽飛友会(金子一義国土交通相)1億1554万円▽至幸会(浜田靖一防衛相)4343万円▽建友会(河村建夫官房長官)2505万円▽甘山会(甘利明行政改革担当相)2284万円▽塩谷政治経済研究会(塩谷立文部科学相)1321万円。


 このうち金子氏の団体は私設秘書8人分、浜田氏の団体は私設秘書ら5人分が未加入だった。両団体の05〜07年の人件費と労災保険料率(賃金の0.45%)から毎日新聞が推計したところ、労災保険料だけで05〜07年の未払い額は金子氏が約52万円、浜田氏が約20万円だった。河村、塩谷、甘利の3氏の団体は、短期アルバイトについて入っていなかった。


【ことば】労働保険

 労働者災害補償保険労災保険)と雇用保険の総称。労災補償や失業給付などを行う。法令で労災保険はアルバイトも含め一人でも労働者を雇用していれば加入義務がある。雇用保険は、1週間の労働時間が20時間未満のアルバイトなど一部の労働者は適用除外となる。保険料は、賃金(給料や手当)の総額に業種ごとに定められた保険料率をかけて算定する。