Hatena::ブログ(Diary)

いい国作ろう!「怒りのぶろぐ」別館

2016-11-22

雇用者報酬が増加しない限り、日本経済の再生はない

日銀があれこれと手を尽くしてきたものの、その効果は十分とは言えない。かつて、白川日銀総裁が指摘していた通りに「金融政策は万能ではない」ということである。
そうではあっても、日銀が出来ることは、金利調節と通貨供給量のコントロールであるので、これに全力で取り組む以外にはない。国債買入継続は、その一部である。


強固なデフレが定着してしまったのは、多くの国民の負担ばかりが増えて所得が減ったから、というようなことである。
これは、05年時点で既に述べていた通りである。


97年が一大「転換点」だったのだ。

05年6月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/86e3f2eebab0ac82859e869f5addb51d


雇用者報酬が98年以降には、下がってしまったのが悪かったのだということも、ずっと以前から書いてきた。
09年12月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/5efb0880e5dbaf7018175d129fffb11b


安倍再登板の時にも、アベノミクスとやらが失敗に至るであろうことは、13年初頭より指摘していた。株高と円安で、安倍称賛に沸き立っていた時期であったろう?

13年2月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/210998cac3fd3cdddb949bf7aeb96088


この時にも、再三警告した。
で、今はデフレに舞い戻る一歩手前に沈んでいるわけだ。


雇用者報酬の推移はどうであったか、近年のデータも増えたので、ざっと振り返ってみよう。

1994年  264兆2643億円
1997年  287兆2334億円
2000年  268兆9245億円
2002年  259兆5474億円
2004年  252兆4270億円
2007年  254兆7202億円
2009年  243兆1723億円

2012年  245兆8103億円
2013年  247兆4211億円
2014年  251兆4256億円
2015年  255兆9512億円 (推計)


2015年の推計額は、GDP統計の雇用者報酬伸び率より計算してみた。
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2016/qe163/pdf/gaiyou1631.pdf


まず、バブル崩壊後と言われた97年がピークをつけていた。皆が思うように、バブル崩壊で日本経済が本格的破綻危機になったのではない。
94年から97年を見れば分かるように、23兆円も順調に伸びていた。

企業収益が破綻に追い込まれるほどなら、そんな伸び率を残せると思うか?しかも、95年には阪神淡路大震災オウムサリン事件があった苦しい年でもあったんだ。それを乗り越えての、数字が97年のものだ。

2000年の数字は金融危機後だったし大型倒産などもあったので、大きく下げてしまった。しかし、真に「強固なデフレ」を招いたのは、その後の落ち込みだ。これは日本経済の体質が、以前とは「まるで別」という水準にまで変革されてしまったせいだ。
株主への還元、これなんだよ。企業利益の為に、労働者が犠牲になったんだ。

03年〜07年の史上最長の好景気、と呼ばれた期間でさえ、02年の水準を下回る程度でしかなかった、ということだ。安い賃金で、便利に使い潰された労働力でもって、企業は搾取を続けたんだ。株主への配当金と称して、企業収益の形で、労働者から収奪したんだ。

06年、07年とリーマンショック前夜というのは、輸出企業が好調だったでしょう?世界経済も絶好調で、バブル懸念だと日銀が引き締めに転換するほどだったわけで。
正規雇用者数も増加に転じており、政府プライマリーバランスもゼロへと近づいた程に好転していた。成長率だって、今よりもずっと高かったでしょう?

しかし、その分け前というのは、日本国外の大金持ちの懐へと流し込まれて言っただけに過ぎない。日本の労働者たちの賃金は増えることなく、安くこき使われたということなんだよ。

就職の超氷河期と呼ばれた02年よりも、ずっと低い水準だったのが07年だった。そして、リーマンショックで更なる悲劇が待っていた。

90年代のバブル崩壊よりも、ITバブル崩壊よりも、日本の金融危機と呼ばれた時期よりも、もっともっと大きな打撃を受けたんだ。243兆円台まで落ち込んだ。


どうしてこうなったか?
それは、日本の経済環境の体質が、米欧式に無理矢理変更されており、労働者の収入を支える環境というものが、20世紀の頃と変わっていたからだ。
故に、日本には関係のない米欧の住宅バブル崩壊と毒債券なのに、震源地米国よりも大きなショックを受けることになった。日本の基礎体力は、銀行イジメや監査法人叩きを乗り切ってくるのが精一杯で、大企業から一般庶民の果てまで、余力を殆ど使い切ってしまっていたんだ。

ただ、震源地ではなかったことと、日本の金融機関キャッシュリッチな企業とか無借金経営企業が90年代よりもずっと多かった為に、企業倒産ラッシュのような事態は避けられた。しかし、賃金の大幅な切り下げとか、非正規雇用を中心とした労働力調整は起こってしまったわけだ。

輸出企業頼み、という、体質変更が大きく災いした、ということだ。なので、当時の落ち込みの酷かった業界というのは、自動車エコカー減税、電機電子系のエコポイント雇用調整助成金などで、何十兆円もつぎ込んだんだ。


安倍政権になっても、実質賃金は下がり続けてきたが、15年からは反転して増加に転じ、雇用者報酬額もリーマンショック前くらいにようやく戻してきたかもしれない、ということだ。

それでも、02年よりも悪い、ということである。デフレ真っ只中だった02〜03年頃よりも、まだ悪いということなのだよ。そうであるのに、増税をぶちかましてきたってわけね。


日本は、本当に狂気の連中しかいないのでしょう。
政治家ばかりじゃない、その取り巻きも、経済界も、マスコミ連中も、識者ぶってる連中も、学者もどきも、皆揃って「おかしい」ってことなのですよ。
それも、何十年も、だ。どうやったら、ここまで失敗を選び続けられるのだ?


こんなことは、10年前から分かっていたことでしょうに。

真の原因は、90年のバブル崩壊でも、不良債権でも、金融危機でもない、日本にはまともなトップ階層が存在してないこと、だ。
政治部門も、学術部門も含めて、だ。


答えは見えたでしょう?
喩えて言えば、「寄生虫の卵」を産みつけられたようなものなのだよ。そのことに気付けない愚か者たちが、よってたかって失敗を繰り返すのさ。寄生虫に操られていることも知らずに、だ。

寄生虫にせっせと養分を供給し、これをまんまと吸い取られているんだよ。


日本の経済運営というのは、泥棒に鍵の設計を任せてきたに等しい。
いくらでも抜き取られてしまう、ってことさ。口では、さも正しそうなことを言い募るだけだから。
経済学の常識」とやらで、簡単に丸め込まれる馬鹿が揃っておいでで何よりです。

税収が増えたら増えたで、ロクでもない部分に金を流し込む、これまたロクでもない官僚たちも大挙して揃っているわけですしね。言って見れば、バカの巣窟というのが霞が関なのでしょう。


で、それでも懲りずに、今度はTPPの可決・成立ときたもんだ。どこまで、バカなのでしょうかね。
救い難き愚か者たちが、雁首揃えて、また「新たな鍵を作ろう」って泥棒に設計させようってんですから、底抜けのド阿呆でしょうな。そのようなレベルの、低劣な人間どもしか、経済界にも政界・官界にも存在しない、ということなのですよ。マスコミにもね。御用聞きの、提灯記事しか書けない愚か者たちが、何度でも大失敗を重ねるという寸法なのです。


日本経済がダメな理由は、結局は、こういうことなんですよ。世界に一つしかない、特殊事情があるってことですね。だから、他の国の経済では、同様の現象を観察できないってわけですわ。

「トランプ詣で」に馳せ参じる安倍総理の軽挙妄動

何故か、日本国内ではトランプ・安倍会談を高く評価している報道などが多い。

個人的な信頼関係を築く、というのが、全く悪いわけではないが、先走り過ぎた感が否めない。しかも、これを絶賛しているマスコミや識者連中がいるというのも解せない話ではある。


こういう外交面の事というのは、有能な側近の策によって動いてゆくものだろうとは思うが、安倍総理に諫言する人間が誰もいなかったのであろうか。
舞台裏は見えたわけではないが、「ヒラリー・クリントン推し」でトランプ氏など歯牙にもかけていなかったであろう、アベの狼狽ぶりが、手に取るように分かる。官僚を面罵するアベの光景が、瞼に浮かんでくるかのようだ。


こういう時には、「ああ、外してしまったな」と内心思っていようとも、これに動ぜず何事もなかったかのように振舞う、というのも、大人の行動のひとつなのではないか。だって、早速訪米して会談って、あまりに露骨すぎやしないか?(笑)


なので、もう少し様子を見てから、どう動くか考えてもよかったのではないか。

トランプ氏がアベ個人との会談に応じたのは、ニュースバリューとして「これは使えるな」と踏んだからだったろう。特別に、トランプ氏が個人としてのアベと是非とも会いたかったわけではないだろう。というか、日本の総理が「アベという男」であることすら、トランプ氏が知っていたかどうか(笑)。


トランプ氏の弱点は、これまでの選挙向けのポーズやキャラ設定では、今後の政治課題を乗り越えられない、ということだ。トランプ氏が演じてきた、選挙向けの、米国人向けに大袈裟に吼えたり、タイマン相手を叩きのめすかのような罵倒を繰り広げたり、歯に衣着せぬ勇ましい言葉を吐き出すことでは、外交だの国際政治だのといった問題には歯が立たたない、ということだ。


かつて、サラ・ペイリン旋風というのがあったでしょう?
あの時だって、政治家としては有力視されていたにも関わらず、彼女が世界の国々がどのように位置しているか、ということさえ、満足に知らなかったことが報じられていましたよね?


米国人で有名であろうとも、その人が世界にどれくらい関心があって、外国について知っていることがどれほどあるのか、というのは、一概には分からないわけなのですよ。勿論、大統領選を通じて、外交の勉強なり討論用のレクチャーなりがあっても当然でしょうけど、中国ロシア、英仏、EUや独といった馴染みのある国々と、アジア諸国などでは重きが違うということもあるわけです。


トランプ氏がよく知らないことを、たとえ海外首脳と会談してみたって、話すべき内容を持たない人物なら、会談のしようがないわけです。トランプ氏は、大統領就任までにやるべきことが多くて、兎に角勉強とか準備に勤しむしかないでしょう。政治のことを殆ど知らないなら、まずは初歩的レクチャーから始める必要があるわけですし。


なので、世界地図上で日本がどこにあって、総理大臣というのがいて、それが誰なのか、という基礎的知識を理解するまでには、ひょっとすると時間を要してしまうかもしれません。日米間の課題などというのは、もっと後回しのことなのかもしれない。


そうした、トランプ氏の時間が限られててバタバタしている最中に、焦って面会に行くことに、どれほどの意義があるのでしょう。もし当方が側近的立場の人間だったなら、まずは「相手の値踏みをしてからでも遅くはないのでは」と言ったに違いありません。先手を打つ、というのが、その局面で非常に効果があるとか大事だという何らかの理由が無い限りは、急いては事をし損じるとの諺に従うんじゃなかろうか、と。


ただ、トランプ氏側にしてみると、「利用価値があるので、利用機会を提供してくれてサンキュ」と話しを繋いだ人同士のレベルでは、「成功裡」だったのかもしれず、貸し借りの点では双方とも「良かった」と思っているかもしれませんね。


日本の外交姿勢としては、何と言うか、「はしたない」「目ざとい」「ホイホイ餌に食いつく犬」「節操がない」といった、日本を見くびられる評価に繋がり易そうで、マイナスイメージは避け難いということではないかと。


上司からホームパーティーに招待状が来ないのに、あなたが自ら押しかけて行くと、どう見えるでしょうか?
招待されたら、伺いますね、ということの方が、普通なんじゃないでしょうか(笑)。


呼んでもいないのに、飛び込んで来る連中には、多くの場合、ロクなのがいない(笑)。
訪問販売のセールスとかでも、悪徳系はよくあるでしょ?
人材売り込みとかでも、自ら速攻で来るのは、ハズレが多そうな気がするが。
優秀で、どうしても来て欲しいような人って、ヘッドハンティングみたいに特別に呼んで来ないと、滅多にやってこないのでは?


どうしても、あなたの考えを是非とも聞かせてほしい、という政治指導者なら、招待の打診が来るのでは?
ブレジネフだの小平だのに、是非とも会談したい、というような場面と違うでしょう?


どのような大統領なのか、という概形が掴めてからでも遅くはないかと。
相手が「会って話したい」と認めるような政治家だと、「会いに行ってもよいか?」とか話が来るに決まってますでしょう?プーチンに会いに行きたい、と、あのドゥテルテ大統領でさえ言うわけですから、力関係というのが出ているように思えるわけですよ。


なので、トランプが「アベと話したい」と所望したものではないと思います。アベの政治家としての力量を、トランプが認めていた、などということも到底考えられないですね。


言ってみれば、映画スターに映画取材のインタビュアーが会いに行って、話をして、写真を撮りました、というのと違いがあまりなさそう、ということですね。





ちょっと追加ですが。


トランプ氏が政治指導者としての器量の大きさがどの程度なのか、というのは、縁故・血縁者をどのように用いるか、ということでも分かることでしょう。
米国ですから、原則としては、やはり能力主義ということで登用されるはずでしょうが、これが、身内優先といった姿勢が出てしまったりするような場合だと、狭量の小者という印象を与えることになるでしょう。たとえ家族に優秀な人間がいて、その意見は聞くに値し、重用すべき内容であるとしても、官職なり立場として権力を与えるか、というのは別だろうと思うので。


また、トランプ・アベの関係が極めて良好ということなら、「在日海兵隊は全部撤去する」くらいの、安全保障上の大転換を目指すことがあってもおかしくはないだろう。それが、トランプの公約にもかなうわけだし、日本は沖縄の負担軽減という長年の「絵に描いた餅」を、遂に実現できるという、大きな政治的成果を手にできるので。

安倍総理が、本気で歴史に名を残したいのなら、戦争法案を強引に通してきたことよりも、「沖縄海兵隊を全て撤去」を実現すれば、沖縄の歴史に栄誉を刻むことになるだろう。勿論、全ての日本国民にとっても、である。


それくらいの覚悟を持って、会談できるようになるなら、就任祝いにすっ飛んで行くだけの甲斐もあるだろう。外聞を捨てて、己の恥を忍んでも、沖縄県民の為に海兵隊撤収を成し遂げるんだ、ということだから。

2016-11-13

一点張りの「TPP教」狂信者たちを信じるな

これまで、TPPを殊更喧伝してきて、これがないと日本がどうにかなってしまう、と大袈裟に脅してきた連中の言い分というものが、いかに出鱈目だったかということが、明らかになってきたわけです。


安倍総理の言い分をまず見てみますか。


・成長戦略の切り札

H27年10月9日 第1回TPP総合対策本部

TPPはオープンで活力あふれる経済を創る、成長戦略の切り札であります。今般の大筋合意を踏まえ、TPPを真に我が国の経済再生、地方創生に直結させていきたいと考えています。政府一体となって総合的な政策を策定してまいります。私が先頭に立って取り組んでまいります。
 TPPのもたらすメリットは大きいのであります。工業製品については我が国から参加11ケ国への19兆円の輸出額の99.9%の関税撤廃されます。鯖江の眼鏡、今治のタオルなど地方の中堅中小企業の特産品の輸出の大きな後押しになります。輸入品の価格の低下により消費者の生活を豊かにしていきます。




・国家百年の計

H28年1月 施政方針演説

模倣過酷な労働、環境への負荷。安かろう悪かろうは、世界のマーケットから一掃すべきであります。二十一世紀にふさわしい経済ルールを世界へと広げる、大いなる「挑戦」。TPPは、その最初の一歩であります。
(中略)
おいしくて、安全な日本の農産物にとって、TPPは、ピンチではありません。世界に売り込む大きなチャンスであります。
 朝早く起き、額に汗して草を引き、精魂込めて作物をこしらえてきた、農家の皆さんの手間暇が、真っ当に評価されるようになる。それがTPPです。
 農産物の地理的表示を始め、投資、労働、環境など幅広い分野で、透明で公正なルールが共有されます。日米両国が主導して、「良いものが良い」と評価される経済ルールを世界へと広げる。TPPは正に「国家百年の計」であります。



大きなことを言うのは、容易い(笑)。


TPP経済だけでなく、安全保障なんだ、対中国包囲網なんだ、といった主張もあったわけだが、これがどうなるのでしょうかね?
いくつか、例示をしてみます。


TPP安全保障の深い連関

http://www.fsight.jp/10644

山下一仁 (11年7月20日



・TPPは安全保障でも効果、シーレーンダイヤモンド構想推進で中国軍事覇権抑止

15年11月19日
http://www.sankei.com/politics/news/151119/plt1511190012-n1.html

マニラ=坂本一之】安倍晋三首相オバマ大統領は18日、フィリピンで開かれた環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)首脳会合で、固い握手を交わした。TPPは交渉を牽引(けんいん)してきた日米の同盟関係を強化するだけでなく、緊密な経済関係が地域の安定を促進することから、安全保障面でも大きな役割を果たす。政府はこの点を重視し、高圧的な海洋進出で覇権拡大を目指す中国ブレーキをかけたい考えだ。

 安倍首相は会合で、TPPの意義について「経済的相互依存関係を深め、その輪を広げていくことはアジア太平洋地域の安定に資する」と各国首脳に訴えた。

 TPPによって域内では人・モノ・カネが行き交うだけでなく、行政ルールの統一も行われることから、加盟国は互いに支え合う形になる。外交筋は「加盟国間で安全保障上のトラブルがあっても、経済を重視して平和的なプロセスを志向するようになる」と指摘。貿易に不可欠な海上交通路(シーレーン)の安定も各国共通の利益となり、中国などの軍事圧力に対し、連携して押さえ込む国際世論を形成できる。

こうした効果は、首相が唱える日本と米ハワイ豪州インドをひし形に結ぶ「安全保障ダイヤモンド構想」による面的な抑止力の強化にも貢献する。東シナ海尖閣諸島沖縄県石垣市)周辺で領海侵入を繰り返す中国は、南シナ海でも軍事拠点化を進めているが、元米国務省幹部は「中国覇権拡大を止める有効な手立てがないの実態」と漏らす。このため、政府米国と連携して中国に対する国際世論圧力を高めたり、中国をTPPに巻き込んだりすることで、中国を融和的な姿勢に転換させることをもくろんでいる。

 議長役のオバマ大統領は会合で、「安倍首相のリーダーシップでTPP合意が達成されたと言ってもいい」と首相の手腕に期待を表明した。




TPPの本質は「安全保障」 安倍首相は対中国包囲網の形成を急げ

14年4月26日

https://the-liberty.com/article.php?item_id=7752

沖縄県尖閣諸島周辺の海や空をはじめとした、中国軍拡が目の前に迫っている今、このTPPは、一部の専業農家に補償してでも、のまなければいけない「安全保障」なのである。


・[古森義久]【TPP合意は日米の対中勝利】〜中国軍拡に備えた安全保障に寄与〜

15年10月9日

http://japan-indepth.jp/?p=22294


どれも、紋切り型みたいな主張が書かれています。もしもTPPが完全に頓挫した場合、彼らは何て言うのでしょうかね。
別にTPPがなくても、日本がそんなに死活的に困ることってないのではと拙ブログでは言ってきたわけですが、狂ったような「TPP教」の狂信者たちがそうじゃない、日本が危うくなるだの日本沈没だの日本は世界の孤児だの落ちぶれるだのと、喚いていたので、大笑いですね。



今回のトランプ勝利という大統領選の結果を招いた要因について、何年も前から「ダメな見方」「大局観なし」「先を考える力のなさ」というものを明白に示していたのが、日経社説です。

社説を書くような論説委員たちが、いかに先々について考える力が劣っているか、ということが分かりますね(笑、細切れの改行が多くて読みづらいですが、ネット用なので仕方がたないのかも)。


TPP参加で経済安全保障を高めよ

12年8月23日 日経新聞社説

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO45286500T20C12A8EA1000/

野田佳彦首相は昨年11月に環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に加わる意欲を示しながら、いまだに参加表明をしていない。国内の政治情勢に目を奪われて、決断を何度も先送りしたためだ。

 その優柔不断な姿勢のツケがまわり、時間切れが迫っている。交渉を主導する米オバマ政権が国内で大統領選挙の対策に追われ、日本の参加問題に十分に対処できなくなる恐れがあるからだ。TPPの入り口が狭くなり始めている。

 首相は一日も早く交渉参加を宣言すべきだ。尖閣諸島竹島領有権をめぐる中国韓国との対立が深まり、日本の安全保障は揺らいでいる。TPPの枠組みを通して、経済の面からも日米の同盟関係を強化すべき局面だ。

 米国は来週から大統領選の熱気が一気に高まるだろう。8月27日に共和党が、9月3日には民主党が全国大会を開く。この時期を過ぎると、米議会や産業界に対する米政権の交渉力は低下する。

 米国内では、政治力が強い自動車業界が日本のTPP参加に反対の立場だ。大統領選は接戦が予想される。オバマ大統領民主党陣営に、自動車業界の反対論を封じる腕力を期待すべきではない。

 日本の意思決定が11月の米大統領選後にずれ込めば、実際の交渉参加は早くても来春以降となってしまう。年明けに米国の新政権が発足した後に、日米の政府間協議や、米新政権と米議会の意見調整などに最低でも3カ月の準備期間が要るとみられるからだ。

 その間にも、現在の参加国によるTPP交渉は進展する。新規で年内に交渉に参加するカナダメキシコを含めて、日本不在のままアジア太平洋地域の新しい通商秩序の骨格ができてしまう。

 オバマ政権米国内の自動車業界の意向を気にしながらも、本音では日本のTPP参加を強く期待している。経済大国となった中国が、投資や貿易の相手国に対して政治的にも強大な影響力をふるう状況を懸念しているからだ。

 国々の相互依存が進んだグローバル経済の下では、一国の安全保障軍事力だけで盤石にすることはできない。自国優先の通商戦略を採る中国と公正に競争できる市場を築き、中国共通ルールの世界に引き出さなければならない。

 そのための最有力の手段がTPPだ。野田首相民主党は、国内の政局だけでなく、今こそ世界の大局を見て判断すべきである。




米国の「自動車業界の反対論」を、ずっと前から見くびっていた連中が考えることというのは、この程度なんだということです(笑)。
拙ブログでは、米国の政治こそが、ひょっとするとTPPを阻止できるチャンスがあるかもしれない、発効を止める微かな希望があるかもしれない、そう思って、いくつかの記事を書いてきました。


そのお陰だったとは思いませんが、しかし、結果的にはラストベルトの投票結果が示すように、かつての産業基盤だった自動車産業界のような方々が、トランプを押し上げたんだということなのですよ。大統領選さえ終わってしまえば、なんとでもなるかのような、安倍自民のごときペテン政治を推進する日本とは、アメリカ合衆国大統領議会は違うんだ、と、当方は考えてきました。だからこそ、サンダース候補を応援していたのですよ。


5年の歳月を経て、実ったかもしれない、そう思うんですよ。たとえ、自分の力が弱くて、何にも役に立っていないとしても。


日本でも、政治を変えられるチャンスがあるとすれば、やはり選挙政治家を震え上がらせることができなければならない、ということだろうと思うのです。



日本が貿易協定を活用したい、というのであれば、何もTPPじゃなくてもいいでしょう、ということも書いてきましたよ。

12年8月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/2c27a24dbf52bdc5badafc35ba10dd97


ASEAN+6のRCEPを動かせば良かっただけでは?
因みに、当方は最初からそう書いてきましたよ?

TPP頼み」でこれに全力投球をしていたことが、かえって失敗となっているのでは?
一本槍ってのが、必ずしもよいとは限らないでしょう?


TPP狂信者たちが騒ぎ続けた結果、こうなったということでしょうね。自ら招いたのですよ。

韓国TPPに加入するかも、とかって、負け惜しみ風味で焚きつけていたけど、交渉参加なんて正式表明があったんですか?
観測記事を流すのは、簡単だものね(笑)。韓国の参加正式決定、マダ〜?
1か月過ぎたけど。


韓国、TPP参加近く決定 経団連会談で表明
2016/10/11 3:08
http://www.nikkei.com/article/DGXLAS0040004_Q6A011C1000000/

韓国を訪問中の経団連榊原定征会長は10日、ソウル会談した周亨煥産業通商資源相が環太平洋連携協定(TPP)に関し「近く公式に参加を決定する予定なので、日本の経済界政府の協力をお願いしたい」との考えを示したことを明らかにした。韓国の担当閣僚が参加決定の方針を示したのは初めて。


日本がTPP交渉に参加しなければ、「韓国TPPに先に参加してしまい、競争に負ける」って、野田政権時代に喧伝しておったバカどもがいたでしょう?霞が関にも、マスコミにも。

けど、韓国は全然参加の気配さえなかったでしょう?
もし、そんなに参加したかったのなら、最終合意までに4年以上もやってたんだから、どの時点でも参加表明くらいできたでしょうに。


11年11月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/a5c77f80ab202c5d5a68430dbc4d2843

http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/815f3d20a7e355ef5cafb54bcb382aad


韓国参加を脅し文句に使ってたのは、霞が関

11年10月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/d88200b0b96ab4706b90dae6acf46cee


踊るマスコミ連中。
アホだな。

2016-11-12

TPPがもたらしたもの

ここ数日の最大の話題といえば、アメリカ大統領選だったが、これが想定外の結果をもたらしたわけだ。


まさかの、トランプ勝利、である。


拙ブログでは、一貫してTPP反対を訴え続けてきたが、当初全く米国民に知られていなかったTPPの存在が、次第にニュース等で認知されるようになり、15年のTPAを巡る議会採決では、二転三転の騒動があった。


けれども、オバマ大統領がどうにか各国大筋合意を取り付けたいということで、遂に12カ国の署名に漕ぎつけたものだった。署名時点では、ヒラリー・クリントン国務長官を降りた後だったはずだが、当初から反対とは言っていなかった。


民主党を中心として、反対運動が盛り上がった辺りから、雲行きが変わった。民主党候補争いで、サンダース旋風が吹き荒れてからというもの、TPP反対を明言していたサンダースに後れをとるまいと、ヒラリーTPP反対と言うようになっていった。


トランプは最初から、TPP反対と言っていたので、ヒラリーとは違っていた。
今回の選挙結果は、様々な要因があると言われているが、中でも大きな勝機となったのが、ラストベルトと呼ばれる没落地帯であり、民主党地盤の強いと見られていた地域のトランプ勝利だった。


日本でTPP交渉参加問題が持ちあがっていた2011年11月に、萌芽があったものと拙ブログでは考えている。

タイトルが『グローバル化の陰で荒廃する米国の地域社会』だった。

http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/f7c95f29cc3320f8eadb6417206e489c


(一部再掲)

リーマンショック後、GMクライスラーは破綻した。ビッグ3と呼ばれた代表的企業は、倒れた。経済危機の本質は、彼らに責任があったわけではなかった。経営方法や金融に手出ししたことなど、問題点もあったのかもしれないが、自動車会社が特別な悪事を働いて企業を破綻させたわけではなかった。むしろ、彼らは同情すべき被害者であった、と言えるかもしれない。

唯一、生き延びたフォードだったが、自動車企業が苦しいことに変わりはなかった。グローバル化自由貿易という美名の下で、ビッグ3の危機となり、仕事を奪われた労働者たちは失業してゆくことになったのだ。


かつて、米国の上質な中流家庭のモデルは、自動車会社の熟練工などだった。ある程度の収入、医療保険年金、といった、社会保障制度基盤を支えていたのは、自動車会社のような優良企業だった。

日本型雇用の原型は、多分こうした米国企業に学ぶところが多かったものと思う。

だが、手厚い保障の存在が、自動車会社を苦しめる遠因となってしまったのだ。
医療費GDP比で15%以上にも達するようになったのは、自動車会社のせいではなかった。米国の貧弱な健康保険制度と競争的な医療(笑)と民間保険会社営利の合作のようなものだろう。

自動車会社は、高騰を続ける医療保険の負担に耐えられなくなっていった。人件費のかなりの部分を、こうした医療年金が占めるようになってしまったからだ。

儲かったのは、民間保険会社年金基金の巨額資金を運用する投資銀行ヘッジファンドなどの金融業の連中であり、彼らのせいでビッグ3は窮地に陥ったようなものだ。経済危機を招いたのも金融業界の連中だったのに、自動車会社は「悪の権化」のように公聴会で厳しく非難されなければならなかった。


全米の労働者たちの雇用を守り続けてきたのは、自動車企業だった。
クリック一つで金を動かす、投資マネージャーなんかではなかった。それなのに、グローバル化アメリカ人の雇用を破壊し、町を廃墟に変え、借金のカタに家を取り上げてゆくだけの金融の連中が、多額の給料を受け取っているのだ。

アメリカ労働者たちを不幸に陥れ、仕事を奪い、家や街を奪うグローバル化が、どうして正当化できようか。
アメリカ人の雇用を守り、医療保険年金を頑張って払ってきたビッグ3が悪者で、アメリカ国内で雇用を生まず医療費も払わないグローバル化推進企業が、本当にアメリカの為になっているのか。彼らは、企業利益を追求するだけで、アメリカ労働者の生活を守ってなんかいないのだ。


社会的責任を果たさないグローバル企業が高く評価され、正当化されるのは、本当に正しいことなのか?
一部の人間たちの為に企業利益を稼ぎまくるのが、望ましい社会なのか?


アメリカの地方は荒廃した。地域社会が崩れ去っていった。
恐らく、小規模農家も同じような目に遭ったであろう。家族経営の弱小農家は、銀行借金で農地を取り上げられたりしただろう。田舎を荒廃させることになってしまっただろう。


それなのに、もっと貿易自由化を推進して、砂漠化を加速させようというのだろうか。それが、アメリカを守れることになるのだろうか?



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祖国危機なのではないかと思う人たちならば、それとも、同朋の苦しみを理解し何とかしようと思う人たちならば、どうにかしよう、いやすべきだと思うに違いないんだ。


それこそが、サンダース旋風だったのであり、ペンシルバニアミシガンオハイオウィスコンシン、等の結果を招いたのではなかったか。苦しむ人々への想像力が欠けていたことが、敗北の遠因になっていたのではなかったか。

参考記事:

11年11月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/19988798f9f27587e2cd6ae4c78a595f

13年3月3日>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/9d35fb2fa5659ea11898c83f8e1e8319

(一部再掲)
日本はマスコミも権力層も霞が関官僚も、ほぼ押さえられてしまっているので、安倍政権を止める手立てがありません。
米国良識ある方々、良心と正義と公正を信じる方々、どうか米国議会に働きかけをお願い致します。TPAがなければ交渉できなくなります。日本の交渉参加を認めなければ、TPPでの掠奪的条約締結は阻止できうるものとなるはずです。日本参加がなければ、豪、加、墨くらいの経済規模が対象となるので、NAFTA以上の自由化インパクトは回避できるのではないかと思います(加、墨は既に多くが自由化されているので)。



声は聞こえなかったろうと思うが、拙ブログの願いは通じたのかもしれない。神様に。
まるで、そう思えるので。



日本は、未だにTPP承認を可決し、このまま成立をさせようとしている。
彼らのペテンは、どういう手口なのか、もう十分分かったことでしょう。自民党が復権する前から、あれほど警告してきたのに、届かなかったわけであるが、そのお陰があったせいなのか、米国側でTPP反対を大声で主張してくれる人が大統領になることができたんだ。


12年11月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/faf547f3f3673c278ce041f7a54648d8


人間万事塞翁が馬である(笑)。
諦めてはならないんだな、と思った。


全米の皆さま、有難うございました。

2016-10-29

原発停止で「毎年3兆円の燃料費」損失は本当か?

過去にも幾度か取り上げたことがある。


2013年10月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/b350e03a2030cd856bf4dd2437f3fbe9

2014年1月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/a6f027499c15cbf1df00452d98faa1ef

   同>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/4453636c4aafd3307f9105409113d6a2


目先のことだけ言うのは、誰でもできるわな。それが、大局的に見てどうなのかというのを考えられるかどうか。


ああ、国富流出だったかを盛んに喧伝しておった石川和男なる人物もいたはずだ。

http://diamond.jp/articles/-/61846


追加の燃料費が「12.7兆円」か。ある一面だけを見れば、そういうこともあるかもしれない。だからといって、原発が有利ということにはならないだろう。


貿易統計から、数字を拾ってみました。

05〜10年度の6年間と、11〜16年度の6年間を単純平均で比較してみることにしました。
2016年度の貿易統計は、1〜6月期と4〜9月期の年及び年度の上半期しかないので、それぞれの数値を単純平均として2倍した数値を用いています。


参考までに、2016年度の推計(予想)は次の通りです。


         輸入量     輸入額

 石油(万KL)   19263     5兆2777億円
 LNG(万トン)   8013     3兆0376億円
 石炭(万トン)  18270      9797億円


同様に、05〜10年度と11〜16年度の輸入額(6年合計)は次の通り。

       05〜10年度     11〜16年度

 石油   67兆289億円     63兆7560億円
 LNG   19兆2733億円     34兆3010億円
 石炭   12兆3485億円     12兆4781億円


平均すると震災前が16兆4418億円、震災後が18兆4225億円、となっていた。2兆円弱の差があったわけである(6年間合計では11兆8844億円)。
これは、原粗油+LNG石炭の輸入額の合計額が11兆円超の多さだったということだが、12兆円の損失が出たんだといった説明はやや不正確となるであろう。極めて短期間のみ観察するとそういうことがあるかもしれないが、それは主としてアベノミクス(意図的な円安)の影響ということがあるだろう。資源価格の価格要因ということもある。


けれども、年3兆円といった説は、今から見れば、そこまで大きくないのではないかと。
また、再生可能エネルギーの接続量が順調に増加するなら、16年度推計額のように10兆円以下に抑制できる可能性があるので、来年度以降には損失を取り戻せるかもしれない。


それに、6年間で増加した輸入額約11.9兆円の全てが発電用の燃料需要というわけでもないはずであり、主にLNG石炭は発電需要が多いだろうが、石油は石油火力の発電施設自体があまり多くはないので、輸入額の差の大部分が発電によるものとは考え難いだろう。なので、実際の発電用燃料の分は減るはずであり、7割として約8.3兆円となる。


あと、LNG輸入額の多かった14年度の輸入トン数8907万トンから、恐らく今年度は約10%の減少が見込まれる。上半期の推移は大幅に減少してきたことを示している。発電需要のうち、ピーク需要に対応してきた部分が、太陽光発電の接続増加によって使用量そのものが減ってきた可能性が高い。実際、2015年度も8357万トンと約6.2%減少していた。


よって、10年単位の長期的視点であれば、再生可能エネルギーの拡大効果が発現してくるのではないか、と考えられるわけである。今年度なみに10兆円以下の燃料費輸入額が継続できれば、「原発が順調に稼働していた」であろう震災前と比しても、年3兆円の燃料費流出などということにはならないだろう。原発燃料費+処分費用等を上回る利益が見込まれる可能性だってある。


LNG増加要因は、石油機器からの代替(CO2削減という背景)があったわけで、その影響と見るべきであろう。

2016-10-23

「福島県の小児甲状腺癌は過剰診断」説は本当なのか?

また菊池誠が何か言ってるのか?(笑)


「過剰診断」説で全て整合的に説明できる、というのであれば、その理屈の説明をできるだろう。それを明示すればよいことだ。何故しない?
ああ、医師でもない人が、何故か全てを知っているかのように振舞えるという特権を享受し続けたいから、ですかね?


あくまで私見であるが、拙ブログの見解について、述べておきたい。


1)スクリーニング福島県の「小児甲状腺癌が増えた」って?


どうも、「スクリーニング」効果というのが未定義らしいので、話者によって都合よく使われてしまう、ということがあるのかもしれない。スクリーニング効果という語が何を意味するかは、こちらからは推定が難しいので、あくまで一般的な説明を書いてゆくこととする。


部位によらず、例えば「ガン検診」をくまなく実施した場合には、「ガン検診」というスクリーニングによって、ガンかその疑いがあるとされる人の数は増えるだろう。罹患率が上がる可能性が高くなる。
精密に検査すると本当はガンではないけれども、検診結果ではガンとして引っ掛かってしまう人もいる(偽陽性の問題)。
そういったことをひっくるめて、スクリーニングを実施すると、ガン検出が増加してしまう、ということは言えるだろう。平凡な言い分はそういうものであろう(当方の推測です、論者の意図は不明)。


福島県の小児甲状腺癌の手術となった126例は、そういうことではない。
当初のスクリーニングとして実施されたのは、いわゆる先行検査というものだった。そこでは、「ガンの検出例は1例も存在しなかった」。スクリーニング実施による、ガン検出の増加を言うのであれば、まずは初回の「ガン検診」に匹敵していたであろう、比較的正確・精密な検査手法と考えられる甲状腺エコー検査での結果で、「甲状腺癌」が検出されていなければならないはずだ。

しかし、C判定は一例も存在せず、ガン(疑い)例は皆無だったではないか。


加えて、福島県外の対照地域検査を同様に実施したが、福島県の結果とほぼ同等であり、有意差は見られなかったとされていたでしょう。

http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=16520

青森市山梨市長崎市において、4365人に同等のスクリーニング検査が実施されたが、ガンの検出はゼロだった。これが、スクリーニングの結果である、ということだ。


すなわち、福島県と対照3地域において、3〜18歳以下の対象者では「甲状腺癌は検出されなかった」ということだ。


これのどこがスクリーニング効果なのだ?(笑)
ガン患者がこれで増えたのか?
否、増えてなどいないのである。
検出されたのは、(良性の)結節か嚢胞性変化であって、「充実性の腫瘤」などではなかった。


よって、「スクリーニングを実施したので、ガンが増えたんだ」説は、極めて根拠に乏しいと言わざるを得ない。


2)「過剰診断」とは何か?

これも話者により、不正確な用いられ方をしていると思われ、真意は確かめるのが難しい。

参考として、こちらが分かり易い。


http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20150324


NATROM氏による定義によれば、端的に言えば、『過剰診断とは「治療しなくても症状を起こしたり、死亡の原因になったりしない病気を診断すること」』とされている。


福島県の小児患者だけが、こうした過剰診断だったのか、というのが論点である。
もしもそう断言できる根拠を有しているなら、例えば菊池誠阪大教授が、「治療しなくても症状を起こしたり、死亡原因にならないガンを切除したんだ」と、根拠を挙げてその立証すればよいのである。

手術を受けた患者においては、

甲状腺癌は治療しなくても何ら症状を起こすことがなかったこと
・死亡原因にもならないこと

を言えるだろうに。
腺外浸潤があっても、リンパ節転移や遠隔転移があろうとも、「症状を起こすはずがない!死亡するわけがない!」ことを立論できるんだろ?
だったら、その論拠を言えばよいのだよ。何故できないの?
論拠もこれといった理路もないけれど、何となく過剰診断だと断定できるのは、どういう屁理屈だね?


3)10年後か20年後まで放置しておいても、本当に大丈夫だと言えるのか?


例えば、甲状腺癌は、増大が極めて緩徐で、10年か20年後じゃないと臨床的には受診に繋がるような症状などがなく、発見されないんだ、若年層の検査はそれを早期発見しているだけなのだ、という言い分があるものとしよう。

(因みに、甲状腺癌の増大速度については、小児患者でどうなっているか、なんてことは、誰にもよく分かっていないはずだが、阪大教授の菊池誠あたりになると、それを知っているということなのだろうか。ならば、その根拠を教えて欲しいもんだ。)


具体例で言うと、次のようなことである(あくまで喩え、です)。

    8歳  直径 A mm のガン

   18歳  直径 A+X mm のガン

   28歳  直径 A+Y mm のガン  →病院受診で発覚し、手術

増大速度が分からないですが、ある年齢に到達すると、エコー検査などを実施すると検出されるものだが、臨床的には無自覚で経過するので発見されるのは20代くらいになってから、ということを言うものであろう。


で、実際に手術適用となるのは、こういう直径がA+Yくらいの大きさであって、それくらいになるまでは放置しておいてよいのだ、と。福島県の小児甲状腺癌では、これが8歳とか18歳時点で検出しているだけなんだ、と。


もし、その説が正しいとするなら、10歳未満であっても一定割合でガンが検出されるはずだろう。それは、福島県だけじゃなく、対照地域においても、だ。しかし、先行検査のスクリーニングで検出された小児は、いずれもゼロだった。腫瘤が発見された人は皆無だったが、その後に主に「10mm以上のガン」が大半となって手術に至ったわけだ。

増大速度が緩徐だったのなら、先行検査で確実に検出されていたのではないか?一部に偽陰性の結果で未検出だったとしても、何十人もの患者の検査結果が、全てそうだったなどとは考え難いだろう。


本来なら、28歳時点で切ればよかったであろう患者を、例えば8歳とか10代で検出しただけで、それを切ってしまったんだ、という説は、先行検査や対照地域でだたの一人も「ガン」を疑う検査結果がなかったことからすると、説明ができないだろう。とてもゆっくりとしか成長しないガンならば、手術時に20mm以上になっている腫瘍を、初回検査で発見できなかったとでも言うかね?
それも、高々1年や2年前とかに検査を実施していたにもかかわらず、なのだぞ?


小児の甲状腺癌の増大速度が、それほど遅いという根拠が不明だし、スクリーニングで検出されなかったのもおかしいだろう。


4)小児の甲状腺癌は男女差がある

福島県において、男児でも手術例がかなり多い、というのが、手術を担当してきた医大医師から説明されてきたものである。
これは、過去のガン登録の結果から見ても、そうだろうと言える。

1990年、2000年、2010年のガン登録患者数によると、30歳未満は90年1名、2010年に3名しかいない。つまり治療対象となった甲状腺癌患者は、男性の若年層では極めて稀ということだ。しかも、登録された患者は、20〜24歳で2名、24〜29歳で2名と、20歳以下はいなかった。同年代人口10万人に対する罹患率では1.14〜2.39であり、30歳時点で発症して手術されるであろうという仮定を置いたとしても、10人を超える数は想定できない。

ガンの発育速度が本当に何十年もかかるなら、スクリーニング検査を実施すると、10代なら検出される可能性が高い。しかし、先行検査でもいなかったのに、実際の手術対象者は数十人にも登っているのだよ。


女性の場合は、バセドウ病と似た傾向であり、男性よりもずっと多いというのが一般的だ。同時期の登録者数を見ると、20代女性は男性の数倍は多く、人口10万人対では6.22〜8.33である。10代女性でも稀に治療対象となっており、0.98〜2.49という罹患率となっている。14歳以下は存在しており、2000年に9歳以下で1名、14歳以下は2000年に1名、2010年に1名だった。

ここで、14歳以下での治療対象者が過去にも存在してきたということから、増大速度が「20年待ってもダイジョウブ」などと果たして言い切れるのか、というになるわけだ。若年女性での甲状腺腫瘍例を知っているなら、そんなに何十年もかかるというのは疑問が生じることくらい当たり前なのでは?

20年くらいしないと腫瘍が大きくならない、ということなら、男性の場合と同様に若年患者は検出されてこないだろうから、だ。しかし、現実にはそうではない。


よって、福島県の小児甲状腺癌患者を見ると、男児の数がかなり多い、ということが言える。しかも、この全てが仮に30歳まで待っていればよかったのだ、という説を取り入れたとしても、30歳時点で手術適用となる男性の数が、人口10万対比で多すぎるということだ。


5)「過剰診断」説を主張したければ、根拠を出すべき

福島県甲状腺検査が悪いものであり、患者利益とならない、と主張しているわけだろう?

ならば、上記例で言えば、18歳時点での大きさがA+Xmm時点で切除しても、A+Yに増大してから切除しても予後は全く変わらないので、待つべき利益はこれこれだから、今は検査も手術もすべきでない、と主張すればよいのだ。では、何mmになるまで待つべきなのか?
たとえリンパ節転移があろうとも、待つべきなのだろう?そう本気で信じているなら、その利益について、正確に説明できるはずだ。

それを言ってみろ、とお願いしているのに、何故言わない?


検査が否定される理由というのは、予後を改善しないとか、神経麻痺合併率を改善しないとか、そういう何らかの理由があるから、だろう?

「過剰診断」説を唱える人間ならば、その理由を挙げて説明することくらい、朝飯前だろうに。阪大菊池誠教授が、小児の甲状腺癌について、どれほど造詣が深いのか知りませんが、自分の知っている甲状腺癌の科学的知見とやらを、世間に開陳すればよいのですよ。

どうした?
やってごらんよ。



スクリーニング甲状腺癌が増えたって?
どこに、そんな根拠があるのだね?


同等の検査を実施した、福島県と対照3地域で、ガン患者が検出されてなかったのに?
一蹴ですよね、こんなの(笑)。


物理学教授とやらが、疫学云々を言うからには、単なるデマを騙るのとは違うんでしょ?
だったら、自説の根拠を全て明示して、言えるだろ?


それができもしないくせに、言うだけならば、デマ屋と同じことをしているのでは?(笑)



※※※23日追記

ああ、言うのを忘れていたが、国が対照地域の検査を止めたのには、相応の理由というものがあるだろう。2011年以降の甲状腺癌の統計値公表もネット上では制限的となっているのは、よからぬ小細工の結果なのではないか?


もしも、福島県と対照3地域で違いがない、ということなら、長崎山梨青森の20歳以下の甲状腺癌のガン登録患者数や、切除手術件数を公表できるはずなのだ。通常は、同年齢人口10万人当たりでほんのごく少数しか検出されないだろう。男性患者なんて、いなくても不思議ではないだろう。それとも、福島県と同程度で患者が存在したのか?

同じく甲状腺エコー検査を受けた3地域の患者数と、福島県と比較してみればよいことだ。
別に、今から改めて検査を実施できないとしても、「甲状腺癌の患者数」は個人情報でもないし、公表できないものでもなかろう。それをしないのには、理由というものがあるのだよ。何かが発覚してしまうから、ではないのかね?



※※※24日追記


菊池誠のような人間がいるので、改めてはっきり言っておく。


2011年以降に、福島県甲状腺癌の手術例となった20歳以下の患者数は、2010年以前の同年代患者数に比して多い。

同じく、甲状腺罹患率の比較でも、福島県の方が高い


国なりガンの専門的機関が判明している統計値をきちんと出すなら、例えば2011年以降「九州全部」の20歳以下の甲状腺罹患率と比較して、福島県の方が高い、であろうというのが推定される。


もし他地域の数値と比べて同程度だというなら、その立証を国が行えば、数値的に根拠を示して「福島県の小児甲状腺癌は他地域と何ら差がない」ことを容易に示せる。甲状腺癌の小児患者なんて、ほぼ全数把握が可能な程度に少ないから。しかし、この立論を一切行わないということは、示せない事情が存在してきたから、ということくらいしか理由がないんじゃないのかね。


国なり公的専門機関なりが、正確な説明をすれば不安を払拭できるというのに、これを回避するのは、それができないからとしか思われないということだ。権威主義的と言われるかもしれないが、素人見解を拡散させるよりはましだろう?


それなのに、なんで菊池誠阪大教授みたいな、医師でも何でもない物理屋に、「デマ叩き(笑)」であるかのように見せかけて、好き勝手に説明をさせておくかといえば、正規戦ではマズいからなのでは?
つまり、ゲリラ戦で誤魔化しているに等しいのではないか、ということだ。



※※10/27 追記


コメントがあったようですが、気付きませんでした。失礼。今日、コメントが反映されたはずです。


で、コメントへの返答を兼ねて、追加しておきたいと思います。


上記記事中の「ガンの検出例は1例も存在しなかった」という部分ですが、これは2次検査ではなく1次検査において、という意図でした。

ご指摘の通り、二次検査となって穿刺吸引細胞診で悪性腫瘍であると診断された症例では、その後の手術対象となり病理診断で甲状腺癌が判明したものと思います。


ですので、一次検査における診断結果としては、甲状腺癌が濃厚であると判断された例=C判定の患者さんは、いなかったものと考えられたのだろう、ということで、上記記事を書いていました。


更に言えば、検査結果の公表初期段階ですと、報道等で甲状腺癌がないといった趣旨の記事があったのと、ネット上では甲状腺ガンではなく「良性結節だ、嚢胞だ」といった説教じみた言説が散見されたように記憶していた為、先行検査=一次検査段階では甲状腺癌の発見例はなかったものと思っていたのでした。


既に当時の記事は消えているのが殆どですが、少し探してみたのが以下のようなものです。


http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120427-OYT1T00250.htm
リンク切れ、一部引用)

読売新聞
甲状腺検査「おおむね安心な結果」…福島途中経過

福島県が全県民を対象に実施している健康管理調査の検討委員会が26日、福島市内で開かれた。18歳以下が対象の甲状腺検査の途中経過が報告され、いずれも「おおむね安心できる結果」であることが報告された。

 甲状腺検査は、3月末までに、南相馬市浪江町などの3万8114人に実施。うち3万7928人(99・5%)がしこりなどが見つからなかったり、問題ないほど微小だったりした「A判定」だった。小さなしこりが見つかった「B判定」は186人(0・5%)いたが、すぐに治療が必要なほどの異常がある「C判定」はゼロだった。B判定の人については現在、念のため二次検査が行われている。これまでのところ、甲状腺がんを疑われる人はいなかったという。


http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20120518160011991

http://togetter.com/li/294217


2012年4月〜5月くらいの時点ですと、ガンは発見されない、といった言説が殆どであり、その後年末くらいになって極少数例が2次検査を経て診断された、といったものだったはずです。


しかし、ご指摘のあったように、その後の調査結果の公表上では、悪性ないし悪性疑いとされた例数が福島県より公表されていたのですので、上記ブログ記事の表現は「言いすぎ」だったと思います。


反省も兼ねて、ブログ記事は、このままの表記としておきます。
有意義なコメントを頂戴し、有難うございました。