夢野久作の飄々
夢野久作ていうと、ドグラマグラなんでしょうけど、オドロオドしくない作品なんかイイ
①＜犬神博士＞
母の三味線と父鼓と節取りにあわせてエロ踊り子を見せる少女として育てられた主人公チイの冒険譚。
両親が悪徳の瘤オヤジの手でインチキ賭博に引っ掛かりスッカラカンになるところを助けるシーン
また当時の筑豊炭田を巡る官と民との利権争いを止めようとして逆に油を火に注ぐようになる官憲ＶＳ玄洋社の騒擾シーン、これだけでも本当に手に汗握る活劇で楽しませてくれる。
②また奇妙なショートショート＜ココナットの実＞
角川文庫＜空飛ぶパラソル＞Ｓ５４，９，３０初に収録＞これって三一書房の＜夢野久作全集>刊行後の７０年代にブームにかってから大分たってから文庫になったんだね。米倉斉加年
モダンなメルヘン
詩人風の共産党員のウルフから貰ったココナットの実と爆弾少女＞ホント召使いのハムラでなくとも、こんな子（美少女エラ子）に恋いしたいなぁ
神戸海岸て場所設定も当時のタルホなんか連想させモダンで文体も例の冗漫なものでない、簡潔な風のような文体。
ハラムは、その間じゅう息詰まるような唸り声をあげつづけた。
「……オヒイ……サマ……オオオヒイ……サマア……アア……アア……」
妾はそれを見下しながら麻雀台の傍に突立っていた。「恋」というものの詰らなさ……アホラシサをゾクゾクするほど感じさせられながら、シンミリした火薬の煙と、腥（なまぐさ）い血の匂いの中に立ちすくんでいた。百五十キロもある大きな肉体が、椅子やテーブルを引っくり返して転がりまわるのを見守っていた……まだ死なないのか……まだ死なないのか……と思いながら……。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000096/files/2107_14851.html青空文庫より引用
〜〜〜〜〜〜蛇足〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
夢野久作年譜
（昭和国民文学全集１７Ｓ４９，８，１０初 筑摩書房 中島河太郎編より）
Ｍ２２（１８８９）
杉山茂丸の長男福岡市に生まれる
Ｍ４３（１９１０）
慶応大学文科に入学
Ｍ４５（１９１２）
父の命により大学退学
Ｔ２
父の命により福岡県糟屋郡香椎村唐原で身体養成のため農園経営
Ｔ４
東京本郷の喜福寺で剃髪、直樹を泰道と改名
Ｔ６
継母の弟五郎死去のため杉山家を継ぐことになり、還俗し農園に戻る
Ｔ７
鎌田昌一の娘クラと結婚
この頃より能喜多流教授となる
Ｔ８（１９１９）
九州日報社記者
Ｔ１１（１９２２）３３才
１１月＜白髪小僧＞誠文堂より杉山萌円名で刊行
同月より九州日報家庭欄に童話を発表〜Ｔ１５
Ｔ１５
５月同社退社
夢野久作名で『新青年』に応募の＜あかしやの鼓＞が二等当選
Ｓ２（１９２７）
２月＜狂人＞の初稿脱稿、再稿
７月＜いなか、の、じけん＞（探偵趣味）に発表
Ｓ３
３月＜人の顔＞（新青年）
１０月＜死後の恋＞（新青年）、＜瓶詰の地獄＞（猟奇）
Ｓ４
１月＜押絵の奇蹟＞（新青年）
７月＜鉄槌行進曲＞（新青年）
９月＜狂人＞再稿擱筆
１０月＜空飛ぶパラソル＞（新青年）
１２月改造社＜夢野久作集>（日本探偵小説全集１１）刊行
Ｓ５
１月＜狂人＞校訂完了
２月＜復讐＞（新青年）
５月福岡市黒門郵便局長就任
８月＜童貞＞（新青年）
Ｓ６
２月＜一足お先に＞（文学時代〜３月）
４月＜ココナットの実＞（新青年）
９月＜犬神博士＞（福岡日々新聞〜Ｓ７１月）
１０月＜自白心理＞（新青年）、＜怪夢＞（文学時代）
Ｓ７
４月＜斜抗＞（新青年）、＜焦点を合わせる＞（文学時代）
７月＜狂人は笑う＞（文学時代）
１０月＜幽霊と推進機＞
１１月＜キチガイ地獄＞（改造）
１２月＜老巡査＞（オール読物）
Ｓ８
１月＜けむりを吐かぬ煙突＞（新青年）、＜暗黒公使＞新潮社刊
２月＜氷の涯＞（新青年）
６月＜爆弾太平記＞（オール読物〜７月）
１１月＜白菊＞（新青年）
Ｓ９
８月郵便局長退官
１月＜斬られたさに＞（大衆倶楽部）、名君忠之（福岡日々新聞）
２月＜山羊鬚編集長＞（オール読物〜５月）
３月＜難船小僧＞（新青年）
５月＜衝突心理＞（モダン日本）、 木魂（ぷろふいる）、＜無系統虎列刺＞（衆文）
１０月＜殺人リレー＞（新青年）、＜近眼芸妓と迷宮事件＞（富士）
１１月＜白くれない＞（ぷろふいる）
１２月＜骸骨の黒穂＞（オール読物）
Ｓ１０
１月＜笑う唖女＞（文芸）、＜ドグラ・マグラ＞松柏館書店より＜狂人＞を改稿出版
３月＜梅津只円翁伝＞春秋社刊行
４月＜近世快人伝＞（新青年〜１０月）
５月＜氷の涯＞春秋社刊行
６月＜超人鬚野博士＞（講談雑誌〜１１月）
７月１９日父死去
＜Ｓ岬西洋婦人絞殺事件＞（文芸春秋）
８月＜二重心臓＞（オール読物）
１１月＜巡査辞職＞（新青年）
Ｓ１１（１９３６）４７才
１月＜人間レコード＞（現代）＜髪切虫＞（ぷろふいる）
３月＜人間腸詰＞（新青年）、＜悪魔祈祷書＞（サンデー毎日）、
＜少女地獄＞黒白書房刊行
同月１１日来客と対談中に急死
４月＜名娼満月＞（富士）、＜女杭主＞（週刊朝日特別号）
５月＜戦場＞（改造）、＜夢野久作全集＞全１０巻黒白書房刊行（３巻まで）
６月＜冥土行進曲＞（新青年）、＜芝居狂冒険＞（ぷろふいる）
１１月＜オンチ＞（講談倶楽部）
