京阪旅行1

旅先なので携帯から簡単に。詳細は帰ってから追記します。
10時過ぎに京都着。ホテルに荷物を置いてから下鴨へ。鳥居をくぐって森を抜けて会場へ行く感覚がなんとも言えない。
あっと言う間に3時間半が過ぎていた。
その後恵文社一乗寺店からガケ書房に回る。山本善行さんの蔵書放出せえるから2冊買う。
夜は六曜珈琲店から京極スタンドという至福の時を過ごす。
明日は初めて大阪の町に繰り出します。



【追記】
新横浜8:09発ののぞみに乗り込む。
車中の友は大谷晃一「大阪学文学編」(新潮文庫)。今回の2泊3日の京阪旅行の為にカバンに入れてきたのはこれと藤沢桓夫「大阪自叙伝」(中公文庫)の2冊だ。別に深い考えはなく、積ん読本の中から“大阪”が題名に入っているものを適当に選んだだけ。2冊とも地味な本だけに、こういう機会を逃すと積ん読本の山の中にどんどんと紛れていってしまいそうだという危惧もどこかで働いたかもしれない。
大谷晃一さんと言えば、僕にとって「評伝 梶井基次郎」の人。大学時代、研究会で梶井の「檸檬」の発表をすることになり、目を通した資料の中にこの本があった。それ以来、大谷さんの名前は梶井基次郎とセットになって頭の中に収まっている。大阪に関わる文学者や作品を取り上げたこの本にももちろん梶井基次郎は出てくる。読むうちに著者が梶井だけの人ではなく、織田作之助の人であり、武田麟太郎の人であり、西鶴・秋成・蕪村の人であることを知った。
10:11京都着。薄曇りで、蒸し暑い。まずはホテルに向かい、大きなバッグを預ける。3月の京都行きの時と同じ宿にしたので、勝手が分かって動きやすい。地下鉄と京阪電車を乗り継いで出町柳へ。駅を出ると鴨川を挟んで、下鴨神社の森が目の前にある。“古本まつり”の幟がはためく中を境内へ向かって歩く。鳥居をくぐり、鬱蒼と生い茂った樹木のトンネル内に入ると、耳を音で塞ぐかのような蝉時雨。これが痛いほどだと言われている下鴨納涼古本まつりの蝉の声かとうるささよりもうれしさが先に立つ。
境内を流れる小川の上の小橋を渡るとテントの列が並んでいる。ついに来た。気持ちは臨戦態勢なのだが、何故か体が言うことをきかない。情けないが腹ぺこなのだ。せっかくの下鴨なのだから、気力体力充実で臨みたい。ここはまず腹ごしらえと昨日スムース同人の方々が戦果の報告に使ったと聞くグリル生研会館に向かう。会場を脇に抜けたすぐ近くにあるのを発見するが、12時オープンとのことでまだ15分ある。開店を待つ時間にとりあえず会場奥にある100円均一コーナーを覗くことにする。ここで口開けの1冊。

同じ本を他のテントでも見かけたので、別段珍しくもない本なのだろうが、その日最初の店で買い物をするとその後いい本が買えると言う古本界の言い伝え(?)を思い出し、買っておくことに。全然それらしくないのだが、装幀は田村義也氏。
時間になったので、グリル生研会館へ。サービスランチのハンバーグを食べる。店内には古本屋さんと思われる数人のオジさんと、古本市に来たということがなぜか分かってしまう老若男女(若女はほとんどいなかったが)がいた。僕もたぶん端から見ればそうとしか見えないのだろうなと自覚しつつ昼食終了。ガソリン満タンで会場へ舞い戻る。
並んでいるテントの数、店の数の多さにまず圧倒されるが、せっかく来たのだから全ての店を覗いてやろうと一番後ろから会場入り口に向けて行動開始。
2、3軒目の100均台から1冊。

さっき読んだ「大阪学文学編」で《堺浜寺に生まれた藤本義一は、明らかに西鶴と作之助の影響を受ける。(略)とくに大阪の芸人を語り明かした「贋芸人抄」「鬼の詩」がすぐれる。》とあったのを思い出したので購入。
ここらあたりで急に雨が降ってくる。雨はしばらく降るとやみ、またしばらくすると降ってくるの繰り返し。テントの中に入って雨をやり過ごし、あがるとテントのない均一台を覗くというリズムでずんずんと行く。全体の3分の1を進んだところで2冊目。

200円台から。この作家の小説は読んでないながらいくつも題名を知っているものがあるのだが、このエッセイ集は初めて。文学・日本語・ドイツといったところが主な話題であるのも面白そう。文章によって文字の大きさを変えているのも目をひいた。
全体の3分の2を過ぎたあたりで松宮書店の200円台に差しかかる。本の状態もよく、面白そうな本がありそうな雰囲気を醸し出している。その中から小林勇「遠いあし音・人はさびしき」(筑摩叢書)を見つける。ビニールカバーがかけてある美本。中身は最近意識的に集めている編集者の人物回想録。ところが、財布に小銭がない。千円札もない。この日の為にと下ろしてきた1万円札が折り目もなくきれいに入っているだけ。なんという不用意。岡崎武志さんの著作を愛読してきた者として、げにあるまじき失態。これで自分が剛の者であれば、200円の本と万札を有無を言わさずレジのお姉さんに差し出すのであろうが、生まれ落ちるとからの小心者ゆえ、どうにもそれができかねる。会計は各店ごとのためこの本を持って万札を崩せるような本に出会うまでうろつくわけにもいかない。しかたなく、本を棚に戻し、他の店に回る(取り置きしてもらうということも考えたのだが、さすがに疲労を感じていた時間帯の為、そのやりとりが面倒くさくなってしまった)。
とりあえず、狙いをつけて入り口近くの赤尾照文堂へ。ここなら万札で買うような本に出会えるだろうと考えたのだ(本を買う以外でお金を崩そうということをまったく考えていないのが我ながらおかしい)。ここで2冊買う。

「本屋一代」は新刊で出た時に買い逃していたもの。1000円だった。これだけでもよかったのだが、1000円に万札を出すのがどうも抵抗があり、どうしたものかと思っていたところに「大河内伝次郎」が飛び込んできた。これは中公文庫版が出ているのだが、カバーの山藤章二氏の手になる丹下左膳のイラストがすばらしいのでやはり大きな単行本で欲しかったもの。これが1500円だから合わせて2500円。堂々と万札で購入する。200円の本を買うのために2500円の本を買うというのはいかがなものかとも思うが、結局欲しい本を買っているのだからよしとする。
松宮書店に戻ってみると、さきほどの小林本がまだ売れずにあった。200円を500円硬貨で払い、無事入手。
古本まつりで買った本はこれだけ。とりあえず、出ている店は全部覗き、疲れ果てて緋毛氈の敷いてある椅子に腰掛けて、会場で売っていたかき氷(イチゴ)を食べて一息つく。気がつけば3時半。会場入りして3時間以上が経過していた。
出町柳に戻って、叡山電車に乗り、一乗寺駅で下車。恵文社一乗寺店に入る。今回で3度目。いつ来てもいい。ただ店内のあちこちの棚の前には若い女性が必ずと言っていいほど佇んでおり、そこを大汗をかいて、古本が詰まったトートバッグを抱えた40代が徘徊するのはちょっと決まりが悪い。店の雰囲気と品揃えとうら若き女性たちで心を和ませて店を去る。今回は何も買わなかった。ここで買い始めると地元で買える新刊も全部買ってしまいそうになるので自重したということもある。
一乗寺駅を過ぎて、北白川通に出、一路ガケ書房へと向かう。ガゲ書房の店の壁には昨日にとべさんの「ちゃりんこ日記」で見た“古本ソムリエ 山本善行の世界ー蔵書大放出せえる”の垂れ幕が、普段持っていても使わない携帯のカメラ機能を思わず使用してしまう。
店内に入ると、すぐに善行棚の特設台が目に入る。小林信彦オヨヨ大統領シリーズの晶文社単行本が平台で鎮座ましましている。いつ見ても実弟小林泰彦氏のイラストとのコラボレーションはすばらしい。「“ポップ”とはこういうものさね」と、思わず棚を見ている若いカップルに教えてあげたくなる。こうして自分の中のオジさん指数は着実に自分の中で高まっていくのだなあと反省して、もちろん実行しない。
色々迷った末にこの2冊にする。

草森紳一さんの重厚さとこのチープな装幀のミスマッチ。アートディレクション湯村輝彦さん。なるほどね。
「私の作家評伝」は新潮選書で3分冊だったものを分厚い文庫1冊にしたもの。読みたかった本なのでうれしい。
この他に1冊。

  • 林哲夫「カバン堂目録」(P-BOOKS 05)

ベージュ地に赤いベレーとスカートの女の子らしき模様が入っている造本がカワイイ。
ガケ書房の前のバス停からバスに乗る。考えてみれば、下鴨納涼古本まつり、グリル生研会館、ガケ書房山本善行蔵書放出せえるとまるで昨日のスムース同人イベントを一日遅れで辿っているカタチになっている。ただし、この近くにあると聞く山本さんの自宅で本棚を見せてもらう最大のイベントが抜けているけど。
ホテルにもどり、シャワー。着替えて夕食に。食事前に珈琲を飲みたくなり、三条の六曜珈琲店へ。多くの方がこの店をほめているのを聞いてぜひ一度行ってみたかったのだ。店の内装、雰囲気がすばらしい。ブレンド(400円)とパウンドケーキ(170円)を注文。お冷やの入ったガラスのコップがとてもいい感じでちいさい。ブレンドに付いてくる角砂糖が大小2個なのもすてき。大を入れると僕にはちょうどいい甘さ。せっかくなので小も入れる。すこし甘すぎる。今度来た時には大1個と決める。パウンドケーキもおいしい。170円は安いと思う。ウエイトレスの女の子が全然今風でないのも楽しい。レジのおばあさんは言うまでもなく味わい深いし、サイコーです。
六曜社でレトロモードに入ったので、こうなれば新京極の京極スタンドに行くしかない。「日用帳」のfoujitaさんが旅日記でここの素晴らしさに感動していたのも記憶に新しかった。ここも初めて足を踏み入れる。店構えからそそられる。看板の“スタンド”の文字がいいですね。店内はもっといい。大理石柄の楕円の長テーブル。レトロな丸椅子。店内は仕事帰りか仕事そのものをしていない感じのオジさんが数人。平日の7時頃とあって店はまだすいていた。オジさん達はビールとつまみでTVの阪神戦を見つめている。こちらは元来アルコールに弱いので、平日しかやっていないオムライス(700円)を頼む。このオムライスが円形でボリューム満点。お腹一杯になりました。店の並びにはロンドン焼という今川焼の従兄弟のようなものが売っている。興味をひかれるが、胃袋に余裕がないので買わずにホテルへ。ホテル近くの書店で『エルマガジン』9月号を買う。
部屋で明日の大阪行きの予習。大阪の街を歩くのは初めてなのでワクワクしてしまう。