zames_makiのブログ

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<山崎豊子の描く戦争の影>

不毛地帯 (2009) シベリア抑留経験を持ち戦争犯罪の追及を受けた元参謀が「2度と過ちをせず日本のために」金に眼のくらんだ事務次官に対抗し本当に役に立つ戦闘機を買う。シベリア抑留の長い描写。
×女系家族 (2005) ?
大地の子 (1995) 中国残留孤児と2人の父
△花のれん1995 TX 主演:宮本信子 →放送ライブラリ
山河燃ゆ(1984) 日本の15年戦争
不毛地帯 (1976) シベリア抑留経験を持つ主人公が、「昔の軍の同僚参謀のために」戦闘機を買う
△横堀川 (1966) 原作「暖簾+花のれん+ぼんち」を劇化、脚本:柳井隆雄 公開:1966.09.15 
△横堀川 1966 NHK 原作「暖簾+花のれん」脚本:茂木草介 1966/04/04〜1967/03/27→NHK川口ライブラリー
×女系家族 (1963) ?
×女の勲章 (1961) ?
×ぼんち (1960) ?
△花のれん1960 CX
△花のれん1960? TBS
▲花のれん (1959) 「女の一生」、戦争でそれまでの財が灰燼に帰すが再起を誓う
▲暖簾 (1958) 戦争後の復興の描写

暖簾(1958)山崎豊子

製作=宝塚映画 配給=東宝 公開:1958.06.15 123分
監督:川島雄三 脚本:八住利雄川島雄三 原作:山崎豊子
出演:森繁久彌(2役:八田吾平、次男孝平):無一文で大阪の昆布屋に丁稚に入った主人公、暖簾分けをしてもらい独立。戦争で廃墟になるが息子が再建、更に発展する。主人公が老いて急死するまで。森繁が2役、しかも同じ場面に出る。連続性あり。
山田五十鈴(妻:八田千代)きつい妻。
中村鴈治郎(浪花屋利兵衛)暖簾を教え込む主人
浪花千栄子(浪花屋きの)金にきついその妻
乙羽信子(お松)本当の恋人。浪花屋で同じ奉公人だった。
=半分は戦後、息子の出征シーンで戦時期突入、統制を嘆く主人公で戦時期を表現、非常に短い。ついで歌で戦後を表現、ここから2役に切り替わる。廃墟と統制経済、闇屋など戦後のキュートな表現。ジープに乗ったGIを軽く表現、意図的に戦後は短くアメリカはいない。

…(後半)それから十年、わいの女房が自由にならへんのと同じやとぼやく吾平を尻り目に、戦争はすべてを奪い去った。
…敗戦−−今は荷受組合の役員としてわずかに昔をしのぶ吾平の前に、もっとも頼みにしていた長男の辰平は再び現われなかった。しかし、思いもかけぬ呑気坊主の次男、孝平の活躍で株式会社浪花屋は再建された。商売のやり方が当世風に華美なのが吾平には気に入らなかった。しかし華々しく浪華屋の店開きがあった日、突然の病魔に倒れた吾平の頬には微笑がただよっていた。あたかも、客を迎えるかのように−−。波瀾に富んだ吾平の一生は終った。しかし、暖簾の伝統は強く受けつがれるだろう。

花のれん(1959)山崎豊子

製作=宝塚映画 配給=東宝 公開:1959.01.27 125分
監督:豊田四郎 脚本:八住利雄 原作:山崎豊子「花のれん」
出演:淡島千景(主人公・河島多加)女遊びで店をつぶした夫に代わって、寄席を経営大繁盛する女丈夫。
森繁久彌(夫・吉三郎):遊びばかりで店を潰す、早くに死亡
佐分利信(市会議員):主人公が心をよせる渋い男、選挙違反で逮捕自殺する
石浜朗(息子・久雄):母になつかない無口な息子、戦争で出征・店を継ぐのを断る
司葉子(息子の恋人):現代的な女性
乙羽信子(女中・お梅);主人公に代わって息子の面倒をみる
花菱アチャコ(がま口):経営の補助

=序盤は夫婦善哉のようだが早期に夫が死亡、主人公の女性の独りのみの人生が描かれ、「女の一生」などと共通の女性の半生記となる。ラスト30分より息子が出征、空襲による被害で終わる。息子は母の心を裏切り商売を継がず、見知らぬ女と勝手に結婚の約束をし、母より女中になつくなど、「女の一生」と共通性高い。出征の後いきなり空襲シーンとなり破壊された金毘羅様の廃墟で、息子の婚約者と未来への希望を語る場面で終わり、話が途切れている。B29など空襲シーンはある程度丁寧に構成されているが現実味はなく、「戦争でそれまでの財が破壊」されるという記号的な描写に終わっている。
 戦争による破壊と再生が一代記に簡単な形で記述されている例。


…大阪船場の河島屋呉服店は倒産したが、多加・吉三郎の夫婦は、天満天神の近くにある寄席を買い取り、天満亭と名づけ再起の第一歩を踏み出した。天満亭は順調に繁昌したが、生活が安定すると吉三郎の遊びぐせはまた頭をもたげ、おしのという妾の許へ足繁く通うようになった。そのおしのの家で、吉三郎は急死した。通夜の日、多加は婚礼の際に持参した白い喪服を着たが、それがいつしか、二夫にまみえずという心を彼女に持たせた。彼女は、幼い久雄を女中のお梅に託し商売一筋に駈け廻ったが、市会議員の伊藤と知り合った彼女の女心は燃えた。−−法善寺の金沢亭も買い取った多加は、それを花菱亭と改名し入口に“花のれん”を掲げた。出雲の民謡である安来節が関西一円を風靡し始めると、多加は出雲に出かけ、そこで伊藤と再会した。が、彼女はこの愛情までも商売のためには吹き消したのである。やがて、多加は大阪に十三の寄席を持つ席元となり御津寺筋に事務所を構えた。世間では彼女を“女太閤”と呼んだ。が、中学生になった久雄には母は遠い存在だった。伊藤の自殺が多加の耳に伝った。他人の罪をかぶり選挙違反で投獄された彼は、獄中で服毒したというのだ。多加はいかに伊藤を愛していたかを知った。

 …(後半30分)大陸戦線は拡大し、久雄にも召集令状が来た。多加は、久雄から出発直前京子という愛人を紹介された。お梅にはすでに打ち開けていると聞かされ、多加は淋しかった。彼には多加が築いた土台を継ぐ意志が無かった。−−戦争は多加の多年の努力をあざ笑うように一面を焼野原にした。放心したように立つ多加の側に、京子が寄り添った。京子は、久雄から自分がいないあとの母を頼むという言葉に従って多加を慰めに来たのである。多加は久雄と京子の仲を許し、自分もまたこの土地に“花のれん”を掲げようと誓った。

<抗日戦争の歴史・軍事史>

◆中国抗日軍事史1937〜1945 菊池一隆 有志舎 2009=決定版、良書
◆戦場と戦闘 中国戦線における非正規戦の諸相 / 菊池一隆(所収:「戦場の諸相」 (岩波講座アジア・太平洋戦争), 2006)=ゲリラ戦
◆中国抗日戦争史 / 石島紀之. -- 青木書店, 1984=抗日戦争時期の通史
天皇の軍隊と日中戦争 / 藤原彰. -- 大月書店, 2006
◆中国戦線従軍記 / 藤原彰. -- 大月書店, 2002

△中国抗日戦争史:中国復興への路 / 劉大年,白介夫 桜井書店, 2002=中国の歴史書の翻訳
◆中国抗日戦争図誌. 上中下 / 楊克林,曹紅[他]. IDS, 1994=中国の写真集

中華民国軍事史研究序説、姫田光義(所収:「民国前期中国と東アジアの変動」 中央大学出版部, 1999)=軍事史研究の遅れを指摘
△国民政府軍の構造と作戦:上海南京戦を事例に / 笠原十九司(所収:「民国後期中国国民党政権の研究」 中央大学出版部, 2005)
日中戦争の軍事的展開 波多野澄雄他 慶應義塾大学出版会 2006=軍事史論文集、通史でない、「戦場の諸相 華中の日本軍、1938-1941」 戸部良一、「華北の対ゲリラ戦、1939-1945」 山本昌弘 など
△摩擦と合作:新四軍1937〜1941 / 三好章. 創土社, 2003=共産党軍の軍事史

−−以下は未定−−
?中国「抗日戦争」史跡ガイド 高田明文芸社 2007
?証言記録三光作戦南京虐殺から満州国崩壊まで / 森山康平. -- 新人物往来社, 1975
?中国河北省における三光作戦:虐殺の村 / 小野寺利孝. -- 大月書店, 2003