文芸の一流派。大正13年に創刊された同人誌「文芸時代」を母胎として出てきた一群の作家たち−横光利一、川端康成、中河与一、片岡鉄兵、今東光、佐々木茂索、十一谷義三郎、池谷信三郎ら−を指す。千葉亀雄が創刊号の印象を書き「新感覚派の誕生」と命名して以来、文学史用語として広く定着した。また横光利一の「頭ならびに腹」に見られるように、ポール・モーランの『夜ひらく』(堀口大学訳)などの影響による奇抜な擬人法的手法を導入し、従来の日本語の文体を一変した。
ごきげんよう、式部です。 先日映画「狂った一頁」を鑑賞したので、今回はその感想です。 ネタバレを含んでいる為、きになる方はUターンして下さい。 https://amzn.to/4bkqZiL 概要 1926年(大正15年)公開、監督 衣笠貞之助による日本のサイレント映画。 日本初の本格的な前衛映画(アヴァンギャルド)、又、日本映画で初めて精神病棟が舞台となった作品。 監督衣笠貞之助が、横光利一や川端康成などと結成した新感覚派映画聯盟の第1回作品で、本作公開後解散となる。 フラッシュバック、オーバーラップ、クローズアップ、多重露光などの映画的な技術が駆使されている。 更に、横光の提案によりサイレ…
横光利一(1898 - 1947) 問)次のABC 各語群中より、関係深い語を線で結びなさい。 A 語群より「横光利一」―― B 語群より「新感覚派」―― C 語群より「機械」。 正解! 高校入試の国語基礎知識か。ところで、新感覚派の「新」って、どういう感覚? 初期短篇にこんな噺がある。 藪入りで一時帰省する丁稚小僧さんででもあろうか、特急列車の座席に少年が腰掛けている。手拭いで鉢巻きを締め、列車の揺れに合せて、流行歌だの民謡だの、ずいぶん大人びた唄を、次から次へと大声で歌い続けている。周りの大人たちは初めのうちこそ、妙な小僧だとチロチロ横目で眺めたが、やがて気にもかけなくなって、居眠りしたり…
今回は川端康成の「古都」を要約していきます。 川端康成はノーベル文学賞を受賞した日本純文学を代表する作家で「雪国」や「伊豆の踊子」等が有名作品です。本作は何度も映像化されている氏の代表作の一つと言われており、「新感覚派」の真骨頂が垣間見える作品です。 ※新感覚派とは簡単に言うと、ヨーロッパ文学の表現技法を用いて美術や音楽の世界に通じる「美」を表現するポエム調の作風です。擬人法や比喩を積極的に用いて、日本社会のある場面を切り取りエモーショナルな感じに現実を描写するという作風です。 ■古都 ■ジャンル:文学 ■読破難易度:低(平易な文章であり、物語も非常にシンプルなので読みやすいです) ■対象者:…
今年も川端康成先生の命日が過ぎました。 もう半袖で過ごしたいくらい暑い日もありますが、川端先生が亡くなった頃にはどのような気候だったのかな、などと思いを馳せています。いつかお墓参りにも行ってみたいです。 さて、川端康成先生の「少年」https://amzn.to/3Um2n2sの本編の内容には全く影響しないことで、また判明したことが一つありますので書きたいと思います。 初めてこのブログをご覧になった方は記事タイトルの「㉘」に目を疑ったかもしれませんが、「少年」関連記事は①から㉗まで本当に書いていますので、宜しければこちらから遡ってご覧いただければと思います。 川端康成関連インデックス - うみ…
この中川智寛というお人は、私の同期でもあり、かつ近年非常にエネルギッシュに論文を発表なさっています。ずいぶん差がついたもんだ。 その横光利一論の単著がついに出たようです。和泉書院様のサイトより内容を。 ※ 本書は、新感覚派の驍将として一時期は非常に注目された横光利一の小説分析を主体としたものである。特に、「純粋小説論」と同時期に発表された長篇は、これまで論及されていないものも多く、それらが「純粋小説論」の達成度を確認するのに重要であるのが自明でありながら、その文学論と対置する形での分析が行われて来なかったものであり、本書ではそれを志向した。 横光利一が「旅愁」へと誘引されて行く動機として、初期…
隼の勝利:久山秀子 1928年(昭3)平凡社、現代大衆文学全集 第35巻 新進作家集 6篇所収。 1929年(昭4)改造社、日本探偵小説全集 第16篇(浜尾・久山集)15篇所収。 久山秀子は「隼のお秀」と呼ばれる女掏摸(スリ)であり、何人もの手下を抱えている。身なりは令嬢か新進女優かと思わせながら、浅草などの盛り場とか映画館、あるいは市電や地下鉄の人混みが稼ぎ場であった。大正末期からその行状記を探偵雑誌に掲載していたが、作品集として出版されたのは昭和4年の日本探偵小説全集の1巻(浜尾四郎との合巻)だった。単行本でなかったのは、当時「円本」と称される「全集本」が大流行していたためと思われる。著者…
1910年ソウル生まれの作家の新訳作品集 翼~李箱作品集~ (光文社古典新訳文庫) 作者:李 箱 光文社 Amazon 李箱(イ・サン)は1910年、日本統治下の朝鮮に生まれ、27歳の若さで世を去った詩人/作家だ。ソウル(当時の名は京城)に生まれ、日本語で教育を受けて朝鮮総督府に務め、後にそれを辞してからはカフェを経営するなどし、やがて東京に向かい、そこで客死した。活動期間は短かったものの、現在の韓国でも熱狂的な人気があるという。 今回紹介する光文社古典新訳文庫の『翼 李箱作品集』は、近年韓国文学の翻訳で大活躍している斎藤真理子の編訳による、李箱の小説、詩、随筆や書簡までを集めた作品集だ。 日…
『イコール』0号の目次。 50人のコミュニティでつくった新雑誌「イコール」0号に3本書いた。 シェア書店の棚主になってみて 「一片万情」闘う編集者人生 「図解コミュニケーション」への招待 第二次深呼吸学部のご案内 「橘川の講義+メディア制作の実践活動になります。実践活動は、雑誌「イコール」を創刊し、塾生たちと一緒に取材・編集を行っていきます。参加ご希望の方は、以下のマガジンをご購読ください。このマガジンで、具体的な活動報告をしていきます。」 橘川幸夫の深呼吸学部(通信教育) 月額1000円 『イコール』編集塾(第二次深呼吸学部)のご案内(『イコール』の編集に参加しながら、メディアの構造と本質を…
稲垣足穂の各社文庫の収録作を紹介 稲垣足穂と言えば、『一千一秒物語』でおなじみ大正から昭和初期の文学者、天体と飛行と無機物に憧れるモダニスト、横光利一や初期の川端康成と並ぶ新感覚派の一員、「A感覚とV感覚」を発表した独自のエロティシズムの研究者──などなど、みなさんもお好きに違いない近代日本文学の巨匠ですよね。 とはいえ、なんとなく巨匠っぽくないというか、いわゆる「文学」の本流からは外れた感じがあるのもまた魅力です。 いま足穂を読んでみようかなとなった場合、まずはやっぱり新潮文庫から出ている作品集『一千一秒物語』を手に取る方が多いのではないかと思うのですが、さてその次の一冊というと、何を買えば…
自我は、それ自身、離散的様相しかもたない現実に対し、フィクショナルな統合を行い、他者を通じて未来への投射を可能にする審級である。自我はこのように未来に対する期待をはらんだ想像的なものである。ナルシシズムの存在に見られるように、自己についての意識とは、自分にとって望ましい、そうありたいイメージである。 新しい仕事に対してイマジナリーに支えられ、自信や気力満々で向かえば、怖いものなしでともかく失敗にくじけずやりきれる。また失敗したときも自分を慰め励まし、気力を充実させることができる。 一方、それだけでは現実との呼応がなくなるので、そのような審級でありながら、現実処理を可能にしていくものである。 こ…
吉武好孝『明治・大正の翻訳史』(研究社 1972年) タイトルどおり、明治から大正にかけて外国の小説、評論、詩の翻訳がどう行なわれていったかを、時系列に追ったものですが、それにとどまらず、日本語の文章が翻訳が進むに連れてどう変わっていったか、また小説や詩のあり方がどう変わっていったかを並行して語っているのが特徴です。 著者が力説しているのは次のような点。 ①翻訳というのは、ただ外国語を日本語に移し換えるという一つの技術にとどまるものではなく、それを通じて、人々の思想内容や感情のあり方にまで深く沁み込み、その方向を左右しないではおかないほどの文化的な創造の役割を果たしているものである。 ②言文一…
兰心大剧院(蘭心大戯院)Saturday Fiction サタデー・フィクション - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarks映画 【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】 【スタッフ & キャスト】 【ストーリー】 【感想】 【トピック】 巩俐(コン・リー) 赵又廷(マーク・チャオ) オダギリジョー 中島歩 パスカル・グレゴリー 黄湘丽(ホァン・シャンリー) 王传君(ワン・チュエンジュン) トム・ヴラシア 张颂文(チャン・ソンウェン) www.youtube.com 《兰心大剧院》/ Saturday Fiction 终极预告(巩俐 …
水晶の座:牧逸馬 1927年(昭2)7月~12月 雑誌「女性」連載。 1933年(昭8)非凡閣、新選大衆小説全集 第3巻 牧逸馬集 所収。 牧逸馬(1900~1935)は林不忘や谷譲次の筆名でもそのジャンル別に分けて作品を書いた。タイトルの「水晶の座」とは、豪州の砂漠の僻地に住む部族に伝わる美と若さを保つ秘法を記した書付のことだという。世界的な探検家で理学博士でもある山岸氏は満場の講演会場で猛毒の吹き矢で殺害される。目の前で見ていた探偵作家の串戸が現場に駆け寄り、その犯人探しに加わる。その場にいた夫人の洋子もその後の行動を共にするのも珍しい。情景描写に昭和初期に流行した「新感覚派」的な表現が顔…
島田謹二『翻譯文學』(至文堂 1951年) 「日本文學教養講座」というシリーズのうちの一冊。このシリーズでは、ほかに『神話傳説説話文學』というのを持っています。島田謹二の本はいろいろ持っていますが、読んだのは『ポーとボードレール』だけ。文章が論文調でなく、語りかけるような調子なので、とても読みやすい。講義を聞いているような感じです。 まず大きく目についたのは、開国後の日本が西洋の文化を取り入れようと志して、それを徐々に身につけてやがて独り立ちしようかというところまでを、大局的に時系列に追っていることです。明治34年生まれで、同時代を生きた人ならではの感想が色濃く表われています。現代のわれわれは…
前回は夏だったのに、気付いたらもう冬がすぐそこに…。お久しぶりです、お元気ですか。 私はストレートネックなどからくる首肩こりと吐き気が一時酷くて読書をしたりだとかまとまった文章を書ける状態ではなかったのですが、何とかまたブログを書けるくらいには元気になりました。まだしばらくは低燃費でやっていきたいと思います。 さて短い文から少しずつ再開したいと思うのですが、私の推し作家である石濱金作先生の作品から色々気になる小説を見つけたので、今回はリハビリがてら簡単にご紹介したいと思います。今回はBLではないです。(※しかしながらブロマンスとして見たい自分が居る。) BLじゃないし、またマイナー作家の石濱金…
小津・清水・山中監督の友情トライアングル 3人の監督が仲良くなった経緯 山中監督は京都から上京 ついに3人の監督が集まる 監督たちは互いの映画を見ていた 山中監督は京都で日本初の脚本家集団を結成 日本映画監督協会が結成される 山中貞雄監督に召集令状が来る 映画人たちの間に悲しみが広がる 山中監督が戦後も生きていたら映画界は? 小津・清水・山中監督の友情トライアングル 今回は番外編としてこれまで紹介してきた 戦前の映画の監督さん、小津安二郎 清水宏、山中貞雄の交友関係が 日本映画界にもたらした影響について 取り上げます shouwatorajirou.com shouwatorajirou.co…
小田切進 編『現代日本文芸総覧』全四巻(明治文献、1968 - 73) たとえばプロレタリア文学史を読んでいると、『種まく人』『文芸戦線』ほかの雑誌名が頻繁に出てくる。どんな人たちが書いていたのだろうか。第一巻に目次がすべて出ている。たとえば新感覚派について読んでいると、『文芸時代』という雑誌名が出てくる。横光利一・川端康成のほかには、どんな人たちが書いていたのだろうか。第二巻に出ている。 『朝』には尾崎一雄のほかだれが。『驢馬』には中野重治と堀辰雄のほかだれが。『青空』には梶井基次郎のほかだれが。『白痴群』には中原中也のほかだれが。いずれも目次がすべて第二巻に出ている。 日本現代文学に足跡を…