訓読 >>> 春日野(かすがの)の山辺(やまへ)の道を恐(おそ)りなく通(かよ)ひし君が見えぬころかも 要旨 >>> 春日野の山添いの道、その恐れ多い道を恐がることもなく通って来られたあなたなのに、近ごろはいっこうにお見えになりませんね。 鑑賞 >>> 石川郎女(いしかわのいらつめ)の歌。ここの石川郎女は「佐保の大伴家の大刀自(女主人)」とあり、大伴安麻呂(旅人・坂上郎女らの父)の妻となった女性です。宮廷にその才を謳われた内命婦(自身が五位以上の女官)であり、後に彼女が生んだのが、稲公と坂上郎女です。「春日野」は、奈良の春日山、三笠山のふもとに広がる野で、現在の奈良公園を含む地域。「妻問い婚」…