うすにごり酒「霧筑波」の一升瓶が届いた。その名のとおり朝霧のごとくうっすらと濁った酒で、濁りがかすかな甘みとなって口当りよく、酔い心地も比類なく、とにかく他では味わったことのないタイプの美味い酒である。 ご恵贈くださったのは、早稲田大学英文学科の大島一彦名誉教授だ。たしか教授ご郷里の蔵元である。 イギリス近代小説のご研究者である大島さんは私より二歳年長でいらっしゃる。英文学科教授でもあられた小説家の小沼丹先生の惣領弟子である。当然ながら無類の文学好きだが、表面上は終始折り目正しき学究の節度を保たれた。 私は零細出版社に身を置いて、教材のご用命をいただいたり、ご著書上梓のお手伝いをうけたまわる泡…