酒寄進一訳岩波文庫2023 手嶋龍一氏が読んだ本で挙げていて、読みたいと思っていたケストナーの終戦日記。残念ながら絶版でどこかにないかと探していたら、新訳が出た。 克服されないままのあの過去は、日中でも、夢の中でも迷いでて徘徊する幽霊と同じだ。幽霊をめぐる古い言い伝えと同じで、幽霊はわたしたちが見つけ、話しかけ、耳を貸すのを待っている。死ぬほど驚いて、ナイトキャップで目と耳を隠しても、なんの役にも立たない。まちがった方法だ。幽霊にも、わたしたちにも効きはしない。幽霊を直視して、「語れ!」と言うしかない。過去に語らせなければならない。そしてわたしたちは聞かねばならない。そうしないうちは、わたした…