「この夏はカンボジアに行こう。」その夏そう思い立って,ポンちゃんに話すと,いつもと違ってその返事は快いものではなかった。たいていどこへでも,私に付いてきたがる彼女であったが,「カンボジア」と聞いた瞬間,少しためらった。「少し怖い」というのがその理由であった。カンボジアは私たちが子どものころから「内戦」の代名詞であった。その象徴が対人地雷。そのイメージが頭の奥に刷り込まれているのである。 ベトナム,ラオス,カンボジアのインドシナ三国は,戦前仏領インドシナとよばれ,フランスの植民地(保護国)であった。カンボジアは大戦後の1953年に独立を果たす。ノロドム=シアヌーク(シハヌーク)を国王とする王国と…