ジョゼフ・ロージー監督作。アラン・ドロン、ジャンヌ・モロー、名脇役のマイケル・ロンズデール(ルイ・マルの『好奇心(Le Souffle au cœur)』で見た覚えがあつた)等が出演。第2回セザール賞の最優秀作品賞。制作陣の美意識が際立つてゐる。その年の競争のレベルは知らぬが、最優秀の栄誉に浴して然るべき作品と信ずる。 雨に濡れた巴里のサスペンス。占領下の巴里で強行されたユダヤ人大量検挙(ヴェル・ディヴ事件)に題材を取る。内容は東洋の故事のやう、描かれるのは、「因果」から逃れられぬ人間だ。静的なカメラワークとコントラストの強い映像とが、作品の緊張を彌増してゐる。 本作を非凡たらしめてゐるのは、…