Dan Simmons 作家。小説家。 1948年生まれ。 SF、ホラー、サスペンスなど多岐にわたるジャンルの作品を発表。 代表作にSF小説『ハイペリオン』(ISBN:4150113335)シリーズなど。 最近イリアス、オデュッセイアをベースにしたSF長編『イリウム』『オリンポス』の二部作を発表し話題になっている。
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SF小説が苦手である。嫌いではなく苦手。科学的な脳みそをどうやら備えていないらしい。筆者みずから、おのれの頭の悪さに呆れる、そんな作文である。 そんな中でも、再読はおろか幾たびも読み返しているのが、ダン・シモンズの『ハイペリオン』である。『ハイペリオン』『エンディミオン』『エンディミオンの覚醒』『ハイペリオンの没落』と、SF小説の世界ではふつうなのかもしれないが、よくまあ書いたと感心するほど長いながい小説である。 なかでも好んでいるのは初めの一冊になる『ハイペリオン』。某アニメに出てくるらししいが、その効果と意味はわかりかねる。 それはまあさておき、この作中登場するサイリーナスという煮ても焼い…
さて、『イリアム』の続きである『オリュンポス』の感想である。 一言でいえば、ずいぶんと失速してしまったなというところである。『イリアム』は掛け値無く面白かった。ハイペリオンから期待して入ってくる読者も満足できるものであった。しかし、『オリュンポス』はどうだろう。つまらないというほどではないが、イリアムの牽引力でオリュンポスを読了させたような、そんな感じがしなくもない。『イリアム』の最後は、著者ダン・シモンズが構築する世界の全ての歯車が回りだし、ようやく世界が動くという期待感を残しての最後だっただけに、オリュンポスがその期待に応えるだけの物語の動きを見せたかというと、否定せざるを得ない。これは、…
十数年に渡って「つんどく」した本がある。それが『イリアム』である。私がハイペリオン・カントスの四部作を愛読していることは、既に何度も述べたことである。しかし、私はハイペリオン・カントスを愛読したとはいえ、必ずしも、その著者であるダン・シモンズのファンではなかった。したがって、ハイペリオンを読破したらかといって、イリアムが読破できなくても何ら不思議ではない。イリアムを長年にわたって積んどくした理由は、やはりその内容によるところが大きいだろう。 世界観のぶっ飛び具合でいえば、イリアムはハイペリオンを越える。ものの数十ページの間に、ヘクトルやアキレスが活躍するギリシャ神話の描写があったかと思えば、未…
椎名さんの本は、「怪しい探検隊」モノや「赤目評論」モノから読み始めた。 ダラダラと読み続けていたが、ガツンとぶつかるような手ごたえがあったのがこの本。 独身で時間のあったときだったので、ほぼ一気読みに近い形で読み切った。 椎名さんは、世界中を飛び回り、その間にいくつもの連載をこなし、さらにこんな小説も書けるんだ、と驚いた。 読後、書棚の中でずっと宝物のように輝いていた。 タイに駐在したときにも持って行った。 長く書棚に置いてあるので、帯の背の部分の色が抜けてしまっている。 最近、ダンシモンズの「ヘリックスの孤児」を再読した。 冒頭の作品「ケリー・ダールを探して」を読みながら、その世界観がどこか…
エンディミオンの覚醒(上) 作者:ダン・シモンズ 早川書房 Amazon エンディミオンの覚醒(下) 作者:ダン・シモンズ 早川書房 Amazon 「エンディミオン (上下)ダン・シモンズ/酒井昭伸訳」 ハヤカワ文庫 「エンディミオンの覚醒 (上下)ダン・シモンズ/酒井昭伸訳」 ハヤカワ文庫 世の中は「三体」ですが、ハイペリオンシリーズの三部と四部を読了。 面白かった!(晴れやかに) 率直に言えば、前二作の方が好きだけど、でも面白かった! せっかく構築された科学的論理なんかさっぱり理解できてないけど、ありったけのイメージを掻き立てられる世界観に夢中で読了。 各惑星の描写が壮大かつ詳細。某局の世…
第三部の後半です。ついに『ハイペリオンの没落』は完結します。巡礼者の物語も終わりです。最後には、作中で言及されている、あるいはオマージュされているであろう、実在した人物について、私の補遺を載せました。ダン・シモンズの知識の幅広さには到底追いつけませんが、シモンズが根底にした知識や価値観を知ると、より小説として楽しめると思います。 前回はこちら。 yayoi.tech 3-38 セヴァーンの病状は急速に悪化した。ハントは質問ばかりだったが、文句を言いつつもよく看病をした。馬車はローマへと入った。そこはスペイン広場であり、ハントはセヴァーンを担ぐと、セヴァーンが指す古い建物へと入っていった。 ソル…
米澤穂信サンの 「本と鍵の季節」 という本を読みました。 本と鍵の季節 (集英社文庫) 作者:米澤 穂信 集英社 Amazon 高校生二人による学園推理モノ といった内容でしたかね。 短編六本ということで、 手軽に読めたのが良かったです。 学校図書館を舞台にしているので それとなく本のタイトルなども 出て来るのですが、 中には知っている本の タイトルなどもあって なぜか嬉しくなりました。 たとえば、冒頭の「913」に 出て来る「ハイペリオン」などは、 私も持っていたりするので 妙に親近感がわいちゃいました。 ハイペリオン (海外SFノヴェルズ) 作者:ダン シモンズ 早川書房 Amazon こ…
第三部です。第三部は長いのでさらに前半と後半に分けます。文庫本では下巻の前半(pp.1-248)に当たります。ちなみにハイペリオンの没落は、3部構成で全45節からなりますが、1部はきっちり15節で書かれています。ダン・シモンズの書き方の工夫が少し垣間見えますね。第三部では、いよいよ時間の墓標が開き、アウスターの全面攻勢が始まり、いままで散々広げてきた大風呂敷がまとめられていきます。 前回はこちら。 yayoi.tech 3-31 アウスターの襲撃がハイペリオンだけではないという周知に対して、世界はパニックに陥りつつあった。ハントに起こされたセヴァーンはデータスフィアにてその状況を把握する。セヴ…
第二部です。文庫本でいうところの上巻の後半(pp.257-476)に当たります。第二部ではセヴァーンの夢=ハイペリオンの出来事の描写がほとんどを占めます。これは、セヴァーンがグラッドストーンへの悪態をつきながらがっつり睡眠導入剤を飲んだからで、よりメタ的に見れば、巡礼者たちの物語が、それぞれクライマックスを迎えつつあるからです。また、タウ・ケティ・センターでも物語は大きく急転します。アウスターの大規模侵攻です。 語り部としての視点にも変化があります。第一部では、タウ・ケティ・センターでの出来事はセヴァーンを第一人称としたセヴァーンの視点で描かれ、ハイペリオンでの出来事はセヴァーンの夢という設定…
前回、『ハイペリオン』の物語をまとめてから一年以上が経ってしまいましたが、続編である『ハイペリオンの没落』を、にわかにまとめます。これもまた長いので三回から四回に分けて。ひとつひとつの節に対して思うところを解説していきたいところですが、ひとまずあらすじを追うことを優先します。 yayoi.tech 巡礼六日目の朝までが『ハイペリオン』、それ以降が『ハイペリオンの没落』の物語になります。ただし『ハイペリオンの没落』では、時間経過が定かではありません。意図して時系列が前後している節があります。これは、ハイペリオンでの描写はセヴァーンの夢という設定になっているからです。実は、『ハイペリオン』での巡礼…