魂の羽ばたきを導く言葉――プラトン『パイドロス』における愛と修辞の本質 プラトンの対話篇『パイドロス』は、ひと目には恋愛や弁論術についての優美な語らいの書として映るが、その深層には、哲学の根幹をなす重大な主題――すなわち魂の本性、真理への志向、そして言葉の力と限界――が精緻に織り込まれている。本稿では、『パイドロス』を単なる恋愛論や修辞論としてではなく、「魂をいかにして真理へと導くか」という問いに対するプラトンの応答と捉え、その思想的意義を明らかにしたい。 本書は、アテナイ郊外の涼やかな自然のなか、ソクラテスと青年パイドロスが交わす対話として描かれている。対話は、パイドロスが持参したリュシアス…