江戸時代初期に描かれた絵図「延宝金沢図」(石川県立図書館所蔵) 初夏の風が吹き始めた金沢。この季節の旅にひとつ、ささやかな提案をしてみたいと思います。スマートフォンを、ポケットの底に。かわりに手にするのは、紙に印刷された一枚の古い地図です。旅先で観光アプリを開けば、最短ルートと所要時間、口コミの星の数までが瞬時に表示されます。便利さに慣れた私たちは、いつのまにか「効率的に観光する」ことが旅の目的になってしまったのかもしれません。けれど、町そのものと対話する時間は、画面の向こう側にはありません。道の折れ曲がり、用水のせせらぎ、町名にだけ残る昔の呼び名。それらは、紙の地図を片手にゆっくり歩いた人に…