僕にとって、面白い作品は大きく二種類に分かれる。一つは読んだあとに「でもしばらく読み返さないだろうな」と思う作品、もう一つは読んだ直後にもかかわらず「うわもっかい読み返そっ!」と思う作品だ。僕にとって好きを超えて「大切」になる作品は、圧倒的に後者が多い。「読み返したい」とはつまり、想像の余地の大きさであり、ここには自分にとって大事な何かがあるという切実な予感だから。 今回は、そんな僕の大大大好きな作品を紹介させてほしい。「あなたの好きな小説はなんですか?」と聞かれたときに挙げる、心の本棚の中心にある作品。これまで読んだ中で、最も感情を咀嚼しきれなかった作品。だから一気に三回読み返した作品。 高…