石川啄木は、日記だけでなく書簡にも執筆中の小説『木馬』(のちに『道』と改題)のことを記している。 (坪内祐三編集『明治の文学 第19巻 石川啄木』筑摩書房 2002年1月より) 四月十六日 (書簡)本郷より 宮崎大四郎宛 「・・昨夜も四時頃迄起きていたのだ。この三日間病気届を出して社を休んでる、それは中島孤島君が書きさえしたら金にしてくれるというから「木馬」というのを書くためだ、ところが思う様にはかどらない。・・・」 啄木は、このころ、新聞社の校正係として勤務し、毎月決まった給料を手にすることができているにもかかわらず、あとさき考えずに浪費してしまい、たびたび勤務先から給与の前借りすらしていた…