石川啄木の「悲しき玩具」は、1912年に没後の遺稿集として刊行された、啄木の第二歌集である。前作の「一握の砂」が、甘美な抒情に満ちた歌が多くを占めるのに対し、「悲しき玩具」は、啄木の晩年の苦悩と葛藤を反映した、切迫した生活感情を、虚無的な暗さの中に表現した歌集となっている。 歌集のタイトル「悲しき玩具」は、啄木の友人であった土岐哀果がつけたものである。このタイトルは、啄木の人生そのものを、幼い頃から病気や貧困に苦しみ、やがて自殺という悲劇的な結末を迎えた、悲しい玩具に譬えたものである。 歌集の冒頭には、次の歌が置かれている。 貧しさの風に 吹かれかへす命 悲しき玩具 この歌は、啄木の人生を象徴…