「マーチ家の父 もうひとつの若草物語」 ジェラルディン・ブルックス著 高山真由美訳 妻と四人の娘を残し従軍牧師として北軍に加わったマーチは、激戦の合間に立ち寄ったヴァージニア州のとある農園を見て、 以前ここに来たこざがあるのに気づいた。 20年前の春、若き行商人として訪れて長逗留したことがあり、それは美しく気高い奴隷女性グレイスとの出会いの時であり、 また奴隷制度の残酷さを目の当たりにした日々でもあった。 その後の歳月──マーミーとの結婚、 哲人ソローやエマソンとの交流、 逃亡奴隷の支援活動への加担、 次々と生まれる娘たち……。 懐かしい思い出がマーチの脳裏をよぎる。 だが、そうした思いをよそ…