訓読 >>> 559事もなく生き来(こ)しものを老いなみにかかる恋にも我(あ)れは逢へるかも 560恋ひ死なむ後(のち)は何せむ生ける日のためこそ妹(いも)を見まく欲(ほ)りすれ 561思はぬを思ふと言はば大野なる御笠(みかさ)の(もり)杜の神し知らさむ 562暇(いとま)なく人の眉根(まよね)をいたづらに掻(か)かしめつつも逢はぬ妹(いも)かも 要旨 >>> 〈559〉これまで何事もなく生きてきたのに、しだいに老いる頃に、何とまあ、こんな苦しい恋に出会ってしまいました。 〈560〉恋い焦がれて死んでしまったら何の意味もありません。生き長らえている今日の日のために、あなたの顔を見たいと思うのに…