頭で分かっていることを、現実で突きつけられて初めて、分かったつもりだったんだと気付く。 「長期キャリア形成のため、[二十九歳までの方]に限定した採用です」 「例外事由三号 イ」と書かれる類のものだ。年齢で応募できない状況になって初めて、自分が年を取っていたことに気付く。もう「若い人」ではないんだ。明日私は三十歳になる。 その求人に書かれた一文に、何かがグサッと刺さったような気持ちだった。「この年齢以上は若くありません」と、線引きされたことがなかったからもしれない。正確に言えば、成人式の時に一度線は引かれてはいるのだが、自分の中で二十代はまだ若いと思っていたし、社会的にもそれで許される年齢だった…