W・サマセット・モームの世界的ベストセラーの一つ、金原瑞人訳『人間の絆』(新潮文庫)を読み終えました。 『人間の絆』 サマセット・モーム 金原瑞人訳 新潮文庫 上下巻 作品後にモームが寄せている「序」でも触れられているように、自伝的小説です。 モームの分身であろうフィリップ・ケアリが10歳のときに母と死別し(父はその半年前にやはり病死している)、30歳で医師免許を得て独り立ちするまでを、大河ドラマ級の長さではないものの、連続テレビ小説クラスの緻密さと分量で描いています。 かといって、淡々とあった出来事を記しているわけではなく、フィリップの成長と、そのときそのときどう感じ、考え、動いたかを内面を…