人類最初の世界大戦、酣なる時分のはなし。 英国下層の労働者らが雑穀入りの黒パンに、まずいまずいと不平不満をこぼしている一方で。 帝政ドイツは鮮血を代用パンの生地に練り込み、まずいどころの騒ぎではない、ある種ゲテモノを開発し、心ならずも人の舌(みかく)の限界を試すような真似をしていた。 前回に引き続き、右田正男の伝えるところだ。 (ドイツ国会議事堂) 山科礼蔵と同じく、食糧の価値を「戦略物資」と位置付けていた彼である。 その観点の形成に、第一次世界大戦当時のドイツ銃後の惨状が寄与したことは疑いがない。実際右田が世に著した『水産と化学』を開いてみると、 …前欧州大戦に於てドイツの敗れたのは、食糧の…