他人は私が私に持つほどの関心を私に持たないので、私のことを全然知らなくても「あなたを知ってます」と悪気なく言い、なんの痛痒も感じない。私は私に切実な関心を持たずにいられないので「自分のことを一番知らないのは自分だ」と感じる。それは心理的な事実だ。 自分自身のことを知らないままの一生は酔生夢死の人生だ。そして、非常に多くの人々の口先ではなく行動が示す考えはこうだ。「幸福に生きられさえすれば酔生夢死の一生でかまわない」 それは、初めから白旗を揚げた人生だ。 死ぬ直前に、本能から用済みのごみとして開放され、ようやく生き方を間違えていたとぼんやり気づくが、その時は手遅れだ。そこから「俺、俺のもの」は本…