大伴大江丸が残した上島鬼貫の逸話は、俳諧師夏目成美の「伊丹鬼貫伝」に記されている。 伊丹の造酒家の三男鬼貫(1661-1738)は、実家が公家の近衛家の領地だったこともあり、京都の近衛家に出入りすることがあったのだという。 当時近衛家は近衛基煕(1648-1722)という和歌、絵画、書に秀でた人物がいた。近衛家には公家たちが集まって、歌の会などを開くことが多かったようだ。 「鬼貫伝」によると、≪近衛の御殿に殿上人らが集まって会を開いていた時、お勝手に三郎兵衛(鬼貫)が訪ねたことがあった。客人たちは「三郎兵衛は俳諧体の句を作っている男だ、召し出して句を作らせよう」と言い出した。呼ばれた三郎兵衛は…