前回の記事の続きです。 「それでも、日本人は戦争を選んだ」(加藤陽子著、新潮文庫)では、松岡洋右の造語「満蒙は日本の生命線」の「生命線」とは、山県有朋がシュタインから教わった「利益線」と同義である、と断定しています。 「誰もが不要と認めているのに継続している制度を『枢密院』と呼ぶ提案」に書いたように、シュタインは伊藤博文に枢密院を想起させた人物でもあります。このタカ派ドイツ人に、日本の政治と軍事に明治期で最も影響を与えた伊藤と山県がともに感化されてしまったので、「日本が戦争を選んだ」のかもしれません。 「生命線」あるいは「利益線」とはなんでしょうか。これは「主権線」の対になる言葉で、主権線が主…