〔32〕 抽象するというように頭を働かせることについて——マルクスは現実の労働をどのように抽象したのか マルクスは『資本論』で労働過程について論じたときに、ミツバチとの対比で建築師を挙げている。建築師は自分の目的を実現するために労働するのだ、と書いてあるのを読むと、ここに言う建築師は人間をさすのだ、ということはすぐにわかる。 ここで、われわれは現実の建築労働者を思いうかべる。そうすると不思議なことに気づく。マルクスが頭に描いているもののなかには、建築資本家はいない。労働者も、設計労働者と現場労働者の区別はない。マルクスは、あたかも、一人の建築師が何をどうつくるのかを考え、実際のすべての作業を全…