あの日はまだ暑かったよな・・ 北見駅へ向かって歩きながら、初めてこの駅に降りた時のことを思い返していた。9月に入ったとはいえ夏の熱気は色濃く残り、陽光に晒された街並みは強いコントラストで縁取られていた。それでも肌にまとわりつくような湿気っぽさはなく、列車と船に一昼夜揺られた身体を手触りのよい爽やかな空気で包んでくれた。北海道を実感した瞬間だった。 あれから僅か4週間なのに、空の色も街を通り抜ける風もすっかり秋の装いになっている。陽が射さなければ肌寒さを覚えるほどで、夜ともなればセーターは必須だ。東京の暑さは思い出すのさえ難しい。 9月を数日残して出張が終わった。 早めに切り上げるよう促され、挨…