はじまりの違ふ花ざかりの交差 西川火尖『サーチライト』 この句集の最後を飾る一句。読んだ瞬間にいい句だと感じて、ことあるごとに思い出している。季語は「花ざかり」で、桜の花の盛り、またその季節のこと。二句目から三句目は句跨りで、ストレートには読めないところもこの句の魅力だ。「花ざかり」を桜のこととして読むのもいいが、ここは2人の人間の姿を浮かべて読みたい。生まれた時が異なるもの同士が、桜の花の盛りのように、人生の最も盛りの時期に交わる。その鮮やかな出会いは、桜の花の咲く春。はじまりの異なるもの同士の交差を桜の花が寿いでいるようだ。 作者の西川火尖は1984年生まれ。略歴によると、第2回龍谷大学青…