ロールズ 哲学史講義 上 作者:ジョン・ロールズ みすず書房 Amazon 『道徳形而上学の基礎づけ』(以下『基礎づけ』と略記)の到達地点は、「道徳性の最上原理を探求し、それを確定すること」(Ⅳ,392)である。その到達地点に向かうため、『基礎づけ』でカントは「善意志」(guter Wille)を出発点とする。 その意味でも、カント道徳哲学の中で「善意志」は重要な位置を占める。しかしカントは、「善意志」についてあまり明確に語っていない。 そこで、本記事では「善意志」の意義を明らかにすることを目的とする。本記事の結論は次の通りである。 善意志以外のあらゆる価値からの絶対的優位性を「善意志」に与え…