🌘【源氏物語212 第十帖 賢木24】尚侍との逢瀬‥暁月夜、一面の霧の中歩いている姿を承香殿の女御の兄に目撃されてしまった源氏 〜心から かたがた袖《そで》を 濡《ぬ》らすかな 明くと教ふる 声につけても 尚侍のこう言う様子はいかにもはかなそうであった。 歎《なげ》きつつ 我が世はかくて 過ぐせとや 胸のあくべき 時ぞともなく 落ち着いておられなくて源氏は別れて出た。 まだ朝に遠い暁月夜で、 霧が一面に降っている中を 簡単な狩衣《かりぎぬ》姿で歩いて行く源氏は美しかった。 この時に承香殿《じょうきょうでん》の女御《にょご》の兄である 頭中将《とうのちゅうじょう》が、 藤壺《ふじつぼ》の御殿から…