去年の夏も、今年の夏と同じように暑かったのだろうか。きっと同じように暑かった日があったに違いない。個々の日のことを辿ると、ここ数年の夏のある日に、あのときはこんな風に過ごしてとても暑かったよなと、エピソード記憶に暑かったということがセットで思い出される。しかし、ひとつひとつのエピソードはぼかしてしまい、全体としての一つ前の夏、二つ前の夏、三つ前の夏・・・と思いを馳せると、記憶の中の夏はいつもだんだん、時を遡れば遡るほど、同じ夏の蒸し暑さであっても、いまよりは柔らかく優しい「暑さ」だったように思える。それは記憶がだんだんと曖昧になり角が取れ、懐かしさを纏い始め、記憶の中のイメージの印象が「セピア…