概論
動物界節足動物門昆虫綱に属する生物のグループであり、現在地球上で最も繁栄している生物(80万種が確認されているとされる)。一般的には昆虫以外の生物(クモなど)と十把一絡げに「ムシ」と呼ばれ、虐げられている。
節足動物はどれも硬い外骨格を持っているが、昆虫はその中でも特に陸上に適応し、進化したグループである。また、4枚の機能的な翅を有しているものも多く、空中にも進出している。基本的に海中を除いたありとあらゆる環境(海、土中、高山、植物はもちろん、ほかの動物に寄生するものも多い。)に進出しており、その結果、非常に多様な形態、生態をしている。
特徴
主に成虫の特徴として以下のようなものがある。
- 頭部、胸部、腹部の3つの部分に分かれている。
- 頭部には1対の触角と1対の複眼がある(ただし、進化の過程でそれらが退化したものもいる)。
- 胸部に3対の脚と2対の翅がある。胸部は3節に分かれており(前胸、中胸、後胸)、3対の脚はそのそれぞれから1対ずつでている。翅は、中胸から前翅、後胸から後翅が出ている。太古の、昆虫が誕生した頃には前胸からも翅が出ていたと考えられているが、進化の過程で失われていった。ただし、翅が退化したグループや、痕跡的になったグループなどもある。
- 腹部、胸部には気門があり、そこで呼吸する。呼吸器官として気管がある。
- 腹部は原則として11節であるが、基部の癒合や末端節の生殖器化などの理由で5〜7節に見えることが多い。
- 生育過程で、幼虫が成虫に変化する変態を行う。変態の形式により、1)幼虫が蛹になってから成虫になる、完全変態をするグループ、2)幼虫が直接成虫に変わる不完全変態を行うグループ、3)形態がほとんど変化しない無変態を行うグループに分けられる。成虫になるときに翅が発達するが、トビムシやシミなど翅の全くない種類も多い。
ただし、これらの特徴には少なからず例外がある。
人との関わり
昆虫類は非常に種数が多いので、少なからず人と関わることになる。その中でも、直接に人間の役にたつものを益虫、害をなすものを害虫と呼ばれる。非常に人間本位な呼び方である。
また、『ムシキング』に代表されるような、最近のクワガタ・カブトの生き虫ブームに代表されるように、ペットとして飼育されることも多い。
枕草子にも、昆虫に関する記述があるし、江戸時代にはスズムシやマツムシなどの美しい声で鳴く虫を売り歩く行商人もいたようである。かの松尾芭蕉も、蝉に関する句を詠んでいる。
さらに、東南アジアを中心として、食虫文化も見られる。日本でもイナゴの佃煮やハチの子などは有名である。直接に昆虫を食すわけではないが、蜂蜜は当然ながらハチの集めた花の蜜を食しているし、ロイヤルゼリー、プロポリスなども同様である。
昆虫の分類
Myrientomata 多節昆虫亜綱
Oligoentomata 少節昆虫亜綱
Apterygota 無翅昆虫亜綱
- Diplura コムシ目
- Thysanura シミ目
Pterygota 有翅昆虫亜綱
- Ephemeroptera カゲロウ目
- Odonata トンボ目
Neoptera 新翅下綱
- Blattodea ゴキブリ目
- Isoptera シロアリ目
- Mantodea カマキリ目
- Dermaptera ハサミムシ目
- Plecoptera カワゲラ目
- Orthoptera バッタ目
- Phasmatodea ナナフシ目
- Embioptera シロアリモドキ目
- Zoraptera ジュズヒゲムシ目
- Grylloblattodea ガロアムシ目
- Mantophasmatodea カカトアルキ目
Exopterygota 外翅上目
- Psocoptera チャタテムシ目
- Thysanoptera アザミウマ目
- Phthiraptera シラミ目
- Hemiptera カメムシ目
Endopterygota 内翅上目
- Raphidioptera ラクダムシ目
- Megaloptera ヘビトンボ目
- Neuroptera アミメカゲロウ目
- Coleoptera コウチュウ目
- Strepsiptera ネジレバネ目
- Mecoptera シリアゲムシ目
- Siphonaptera ノミ目
- Diptera ハエ目
- Trichoptera トビケラ目
- Lepidoptera チョウ目
- Hymenoptera ハチ目
なお、これらの昆虫綱に属するグループの内、日本から見つかっていないのはカカトアルキ目とジュズヒゲムシ目だけである。ジュズヒゲムシは日本でも見つかる可能性があるらしい。見つけた人はヒーローになれるかもしれない。