「虎の尾を踏む男達」(1945、公開1952)は、原作である能の演目「安宅」の歌舞伎の当たり狂言「勧進帳(かんじんちょう)」を下敷きにしたミュージカルコメディ。59分。 新進監督だった黒澤明が自身の脚本で企画し、太平洋戦争終戦の前後に低予算で撮影した監督4作目となる作品。 大河内伝次郎演じる堂々の弁慶とエノケンこと榎本健一のおしゃべりな道化役の強力(ごうりき)、この対比の妙がこの映画を非凡なものにしているB級映画の傑作。 エノケンがコメディタッチの狂言回し的な役まわりで、とぼけた味わいがあり、当時、爆笑王と言われたコメディアンぶりをいかんなく発揮している。 最大のヤマ場は、関所での「勧進帳」に…