そのような時、やはりある文学賞のパーティで、僕は小林秀雄氏の脇に坐ったのである。パーティで小林氏にこちらから話しかけるというようなことは、僕の生活感覚にはない。小林氏から、渡辺先生の葬儀に行けなかったことについて、遺族の方に気持をつたえてくれ、そして、とそのようにいわれて僕が小林氏の脇に坐ったのであった。小林氏は、渡辺先生が、およそ同行者をよせつけぬようにして、ひとり学問の道を進まれたと思うと、東京帝大仏文科を前後して卒業した辰野隆門下としていわれた。つづいて、渡辺さんは、気違いだからね、といわれ、僕がその言葉に攻撃的な反問をし、あげくは涕泣するにいたったのである。小林氏は僕が椅子の肱かけに置…