中央に楽器を演奏する女性がひとり。 右下には、卓で茶を楽しんでいるふうの男性がふたりである。こちらに背を向けて座る男性は演奏する女性をみつめ、もう片方は演奏に聞き入っている。指をからめ、首を傾け、斜めに視線を落とすその表情は、確かに音楽の旅路にある。 左下には、演奏を終えたばかりらしい女性が楽器片手に、茶を運ぶ給仕に声をかけている。わたしにもお茶をくださいと。 問題は、左上にいる女性である。大きな屏風の影から半身みせてこの場を覗きこむ、その理由はなんなのか。 箱入り娘のわたくしも、父上の反対を押し切ってあの楽器を習いたい? 音楽の旅路途上とおぼしき卓の男性に、実は妖術をかけている? 単純に、次…