明治維新後、それまでのいわゆる鎖国をやめ、海外諸国と広くつきあうこととなった日本。 社会のさまざまな人びと、集団、階層、いずれも問わず、海外からもたらされる新しい情報に驚いた。 仏教界も例外ではない。大いに驚いた。 ただし、彼らの驚きは、ほかとはちょっと違う。 彼らは、純・外来たるキリスト教やイスラム教の教えに驚いたわけではない。 自らがよく知る仏教について、驚きに見舞われた。 もっとも、そのことを噂には聞いていた。しかも、昨日今日聞いた噂ではない。 おそらくは、はるか6世紀、仏教伝来以来のウワサである。 内容はこうだ。 遠い異国の仏教徒には、「小乗」と呼ばれる教えを信じる人々がいる。 小乗と…