🌿薄衣を残して去る空蝉【源氏物語32 第3帖 空蝉3】 「もう皆寝るのだろう、じゃあはいって行って上手にやれ」 と源氏は言った。 小君も きまじめな姉の心は動かせそうではないのを知って相談はせずに、 そばに人の少ない時に 寝室へ源氏を導いて行こうと思っているのである。 「紀伊守の妹もこちらにいるのか。私に隙見《すきみ》させてくれ」 「そんなこと、 格子には几帳《きちょう》が添えて立ててあるのですから」 と小君が言う。 そのとおりだ、しかし、そうだけれどと源氏はおかしく思ったが、 見たとは知らすまい、かわいそうだと考えて、 ただ夜ふけまで待つ苦痛を言っていた。 小君は、今度は横の妻戸をあけさせて…