🌷命婦は手引きを考える【源氏物語86 第六帖 末摘花6】 秋になって、 夕顔の五条の家で聞いた砧《きぬた》の 耳についてうるさかったことさえ 恋しく源氏に思い出されるころ、 源氏はしばしば常陸の宮の女王へ手紙を送った。 返事のないことは秋の今も初めに変わらなかった。 あまりに人並みはずれな態度をとる女だと思うと、 負けたくないというような意地も出て、 命婦へ積極的に取り持ちを迫ることが多くなった。 「どんなふうに思っているのだろう。 私はまだこんな態度を取り続ける女に出逢ったことはないよ」 不快そうに源氏の言うのを聞いて命婦も気の毒がった。 「私は格別この御縁はよろしくございませんとも言ってお…