俺がなぜ陸上を始めたか? それは小学生のころの運動会。 俺は勉強ができるわけでも、明るい性格でもなく、 運動神経が良かったわけでもない。特に何も取り柄はなかった。 人数集めで参加したリレー。誰も期待などしていなかったと思う。 バトンを渡された順位は一番だった。 俺は無我夢中にただ走った。 みんなの歓声をこれほど受けたことはなかった。 ゴール寸前、俺の隣をひとり。またひとり。と駆け抜けた。 ゴールして疲れ切った俺にかけられる声。「どんまい」 みんなの落胆する声をこれほど聞いたことはなかった。 「くやしい。」 俺の初めて抱く強い感情だった。 居ても至ってもいられなくなった。 悔しくて。ただただ悔し…