「——いま汝らの怨《えん》じた上の者とは、 みな武家であろうがの。 よいか、守護、地頭、その余の役人、 武家ならざるはない今の天下ぞ。 ——その上にもいて、 賄賂取りの大曲者《おおくせもの》はそも誰と思うか。 聞けよ皆の者」 彼の演舌は、若雑輩のみが目標ではなさそうな眸だった。 「それなん鎌倉の執権高時の内管領、 長崎 円喜《えんき》の子、 左衛門尉《さえもんのじょう》高資《たかすけ》と申す者よ。 うそでない証拠も見しょう。 きのう今日、蝦夷の津軽から兵乱の飛報が都に入っておる。 ——因《もと》を洗えば、それも長崎高資の賄賂から起っておる」 又太郎は、きき耳すました。 はからずも、 彼が長柄《…