昼の部は見ごたえのある演目がならび、それぞれ面白い舞台になっている。 最初は『寺子屋』である。尾上菊之助はある時期より女形から立役へと、そのとりあげる役の比重をおおきくシフトしてきた。遠くない将来なされるであろう八代目尾上菊五郎襲名をみすえ宗五郎や新三を演じるだけではなく、岳父・吉右衛門があたり芸とした時代者の立役の数々に挑んできた。それが今月は松王丸を初役で演じる。とはいえ誰もがまさかと思った役、そもそも役があっていないだの、ニンが違うと言ってもしかたのない話。むしろ菊之助の葛藤のあとが随所に見られて興味深い。 出のセリフである「ヤァレお待ちなされ、しばらく」は調子を変えず豪快さ一本。しかし…