素朴な温かさを感じる私小説 最近の芥川賞受賞作は、あまり読んでいないのですが、過去の受賞作は折にふれ読むことがあります。今回取り上げるのは、三浦哲郎の「忍ぶ川」です。 昭和35年(1960年)10月号の「新潮」に掲載されました。第44回芥川賞受賞。 素朴な温かさを感じる私小説です。 著者の三浦哲郎は1931年青森県八戸市生まれ。2010年死去。 あらすじ 三浦哲郎自身の経験を基に書かれています。主人公の「私」は東北出身で東京の私立大学に通っています。寮の近くに「忍ぶ川」という料亭があります。「忍ぶ川」は大衆向けではあるものの、貧乏学生には敷居が高くめったに行けません。その料亭で働いている20歳…