「タロウ、また明日な」あきのりは、庭の隅に作った小さな墓標にそう声をかけるのが日課だった。小学四年生の彼にとって、柴犬のタロウは物心ついた時からいつもそばにいるのが当たり前の存在だった。生まれたばかりの自分を、ゆりかごのそばでじっと見守っていたというタロウ。やんちゃな盛りには、どこへ行くにも一緒だった。泥だらけになって野山を駆け回り、疲れて帰れば、タロウのふかふかのお腹を枕に昼寝をした。そんなタロウも、あきのりが成長するにつれて、少しずつ老いていった。大好きだった散歩も足取りが重くなり、寝ている時間が増えた。そして、去年の冬の寒い朝、タロウは冷たくなっていた。老衰だった。獣医は「大往生だよ」と…