昔丹後国に、浦島といふもの侍りしに、その子に浦島太郎と申して、年の齢二十四五の男有りけり。明け暮れ海のうろくづをとりて、父母を養ひけるが、ある日のつれづれに、釣をせんとて出でにけり。浦々島々、入江々々、至らぬ所もなく、釣をし、貝を拾ひ、みるめを刈りなどしける所に、ゑしまが磯といふ所にて、亀を一つ釣り上げける。浦島太郎此亀にいふやう、「汝、生有るものの中にも、鶴は千年、亀は万年とて、命久しきものなり。忽ちここにて命をたたん事、いたはしければ、助くるなり。常には此恩を思ひ出すべし」とて此亀をもとの海にかへしける。 かくて浦島太郎、その日は暮れて帰りぬ。又次の日浦の方へ出でて、釣をせんと思ひ見れば、…