それから昴は、何度か寺を訪れるようになった。 日曜の朝、人知れず。 静かな本堂の石段を登ると、そこには変わらず和尚の姿があった。 護摩の火は、いつもと同じように、ゆらめきながら、すべてを受け入れるように燃えていた。 「今日も来たか」 「あ、はい……なんか……あの火を見てると、少しだけ……楽になるんです」 「火はな、自分自身を燃やして光を放つ。 誰かのためにあたたかさを届けながら、自分は静かに尽きていく。 それが本来の“いのち”の姿や」 和尚の言葉は、押しつけではなかった。 ただ、そこにあるだけ。 昴の心が、勝手にそれを受け取っていた。 職場では相変わらず、昴は目立つ存在ではなかった。 けれど、…