■ 脳への薬物投与の「最大の壁」:血液脳関門(BBB) 医薬品の開発において、「目的の臓器に薬が届くかどうか」は常に重要なポイントです。特に、脳に作用する薬剤の開発には、大きなハードルがあります。それが「血液脳関門(Blood-Brain Barrier:BBB)」という、生体が持つ極めて精緻な“セキュリティシステム”です。 この関門は、脳の毛細血管を構成する内皮細胞が密に結合し、有害物質が脳に侵入するのを防ぐ構造になっています。その働きのおかげで、私たちの脳は外敵から保護されていますが、一方で薬剤さえも通さないという難点も抱えています。 実際、製薬企業や研究機関によると、従来の薬剤のうち約9…