母の夏、始まる 夏は、母が絶好調になる季節。この年の夏も、彼女は飛ばしていた。昼夜逆転し、働いてもいない、動きもしないので、数日眠れなくなる時があるらしい。それが夏の暑さと合わさると、体力的に堪えて、幻覚を見るようになるのだ。何もないところを見て、いきなり話し始める母。私を殺すために誰かが付け狙っていると言い出す母。母自身ではなく、私が殺される対象で本当に嫌。夜な夜な幻覚を見て、外へ徘徊する母。事故にでもあったらどうするのか心配。ただただ怖かった。お化けが大嫌いでビビリな私は、幻覚と理解しながらも、もしかしたら母の言っていることは本当かもしれない、本当だったらどうしようとビクビクしていた。おっ…